蚤の市

                                        ヒシ・プラスチック ヨーロッパ(株)
                                    市丸 英明

ANTIQUES MARKET, FREE MARKET と言うと、英国がすぐ頭に浮かぶと思いますが、ここベ
ルギーもどうしてどうして、人口一千万人には過分な程多くの市が各地で開かれています。
小生が知る限りでも週末(土日双方、又はいずれか)に定期的に開かれる「市」だけでも
大小150以上に上ります。
同じ人口一千万の東京で定期蚤の市を梯子しようとしても二ヶ所が精々から比較すると如
何に多いか、否如何に日本が少ないかがお判りに成ると思います。

ベルギーのマーケットは

等に区分されますが、大別すると前三者の古物・骨董と後三者の生鮮・雑貨・クラフトに
別けられます。

ここでは骨董市・蚤の市を中心に述べますが、転売益を狙われる方は高いが完品(修理・
傷無し)の一級品を相対的に信用の高い骨董店又は骨董市で、お小遣いの範囲で瓦落多の
中から掘り出し物をと言う方は、BROCANTE をお奨めします。

小生は主に BROCANTE 通いですが、並んでいる一見瓦落多から表の歴史の裏で生活してい
た当時の人々の生活の匂いを感じ取るのを楽しみとしています。

石炭を入れたり、ストーブの上で熱して使用したアイロン(正に鉄)が地方では第二次世
界大戦迄使われていた事や、徴兵での身体検査で視力が悪いにも拘わらず眼鏡を持ってい
ない新兵用の支給丸縁眼鏡とか、日常使っていた食器(VILLEROY & BOCH 社が合併する前
の夫々の窯名のファヤンス等)、カメラ、双眼鏡、人形、おもちゃ、アクセサリー(古い
割に斬新なデザインの物も有り、まず同じ物を付けている人には出くわしません)、懐中
・腕時計、版画(浮世絵等の日本の骨董は必ずしも欧州が安いとは限りませんが、一般的
に欧州の物は日本の骨董市では三倍程度の値が付いています)、絵葉書、湯たんぽ、テレ
フォンカード、蓄音機・レコード、軍装品(日本ではいかなる銃器は勿論、刃渡り十五セ
ンチ以上の刀・銃剣・サーベル等は美術品としての許可が無い限り所持禁止ですのでご注
意を)、デルフトの古いタイル、古い地図、ゴルフクラブ、古い工具、シャンデリア備品、
車のナンバープレート、ドアの把手、錆びた釘等こんな物迄と思う物から、現代人の目か
ら見ても斬新な物迄有り、その一つ一つにその時代の生活の匂いを感じる事が出来ます。

日本では余り見ない MADE IN OCCUPIED JAPAN と有る 1946 - 51 年に輸出されたテイ
ーカップ&ソーサー(安かろう悪かろうの見本みたいな物で、当時の日本が物資不足の中
必死で生産していたのを彷彿とさせます)を100フランで手に入れたり、250フラン
で MEISSEN の磁器(戦後の品)を買えたりとか色々と出会えるものです。

定期骨董市の主な所は

BROCANTE は各地で催されますが 古物で無く、アメ横的な百円均一、九八○円的な物を見て歩きたい方は ここで総額1万フラン買うのは中々難しいです。

多くの市はテント掛けで有れば良い方ですので、出店の数は天気に左右され、又客の出足
が悪いと早々に店仕舞いをする光景も見受けます。
又大半は青空市で無料ですが、中には公共施設等の屋根の下で入場料(通常50フラン程
度百フラン以上は高い方)を取る所も有ります。

市での楽しみの一つが値引き交渉ですが、目安としては二割引き、三割引けたらまず満足
と言う所でしょうか。 一般的に建値の五割が彼らの買値とお考え頂けば良いと思います
ので、余りにも安い指し値をすると鼻にも引っ掛けてくれず嫌な思いをする事が有ります
ので御注意下さい。 又、50フランの物を40フランには値切らず100フラン程度の
物は言い値で大尽風を吹かせて買って下さい。

チャンとした ANTIQUE SALON に行かれる時にはそこそこの服装をお奨めしますが、蚤の
市的な所には軽装(ジーパン等)で行かれ、買う時には日本人どうし固まらずにネゴをす
る方が値引きを取り易いでしょう。

偽物では無いかと不安に成るのが骨董買いの常ですが、これは自分の目を肥やす意外に有
りません。 その為にも蚤の市の良い所は、博物館と違って触れる事ですので一言断って
良く触り肌で本物の感触を感じ取り且つ夫々の相場感を掴む事が先決です。
蚤の市での買い物は出会いですので、基本は衝動買い(一通り見てからと戻ってみたら先
に買われてしまいそれが見納めと言う事も有ります)ですが、相場感・目を肥やす迄は手
頃なポケット・マネーの範囲で買い(偽物でもその間夢を買ったと諦められる程度の額の
物)、有る程度自信がついてから大きな買い物をされる事をお奨めします。
11月からイースター前迄は定期市でも開かれなかったり、小規模に成ったりしますので
お気を付け下さい。

紙面の都合上一部しか御紹介出来ませんが、どれかの市に行かれると通常スタンドに今後
の他の市のちらしがありますので、それを小まめに集める(特に不定期市)と芋づる的に
掴めてきます。 又は、LE JOURNAL DU COLLECTIONNEUR (月刊誌。二ヶ月分のスケジュ
ール BF120)、又は LE GUIDE OFFICIAL95/DE BRADERIES EN BROCANTES (350BF) の
小冊子を買われると大概の年間スケジュールが載っています。

一日に三ヶ所梯子をして、一つも手に取るに価する物を見ない事も有りますが、皆様が天
気の良い週末の一日を御家族で蚤の市に行かれ何か良い出会いが有る事を祈ります。


市丸英明(いちまる・ひであき)
感想等は、info@nihongo.com までお願いします。
1995年10月1日

本稿は市丸英明氏並びにベルギー日本人会の了解を得て、ベルギー日本人会会報より転載
させていただきました。 なお、転載にあたり、若干の変更をしております。

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