大蔵省が大和銀行から報告を受けたのが遅かったことや、その後、米国への報告が遅くな
って国際的な信用の問題に発展したことは非常に残念なことです。
今回問題にしたいのは、一般的にはあまり問題になっていない次の点です。
既に問題視されている事柄には、それなりの反省や議論もなされているので、あえて問題
にすることも無いと思います。 しかしながら、問題意識が薄弱なことにこそ本当の問題
を含んでいることが多いからです。
素人の私が問題にしたいのは、実は大和銀行が米国での失態を認めて全面撤退を受け入れ
たにも拘わらず、司法の面では全面無罪を主張して戦おうとしていることです。 また、
それを監督官庁の大蔵省がこの方針を是認していると思われることです。 少なくとも、
全面無罪の主張に対して異議を唱えたとの報道には接していません。 また、各種の報道
機関も、その社説などで大和銀行事件そのものや大蔵省の対応についての問題を指摘して
いるものも、この点には余り言及していません。
勿論、司法取引を睨んで、出来るだけ罰金を少なくしようという企業としての作戦である
ことは理解できます。 しかしながら、大蔵省の立場は違うはずです。 極端な言い方を
すれば、大和銀行はもう米国から撤退するのですから、米国との関係が如何になろうと知
ったことではありません。 他方、大蔵省は日本の金融業界の監督官庁として、今後も米
国とつきあってゆかなければならない立場です。 いや、単に米国だけでなく欧州も注目
しているのです。 ですから、自ずから立場の違いがあるはずです。
簡単に言って、外国に出かけた日本の銀行が先方の規則に従わず。 虚偽の申告をするな
ど悪いことをしたのです。 監督官庁として厳しく指導するのが当たり前です。 にも拘
わらず、全面無罪の主張をほっておくのは「指導力のなさの証明である」とか、「大蔵省
自体が二枚舌を使っている」と考える人が出ても仕方がありません。 日本の金融破綻が
問題になっている時期にこんな風に考えられ得る状況を作ってよいのでしょうか?
もしも、大和銀行に対して「相手国の法令に違反したのであるから、全面無罪を主張して
はならない」と大蔵省が指導したとして、その結果、(そんなことはあり得ないと思いま
すが)仮に罰金の額が大きくなったとしても、それは、当然支払われるべき代償であり、
むしろ大蔵省としては今後、他の銀行を指導して行く上で望ましいのではないでしょうか。
少々のお金が掛かったとしても日本全体から見ればものの額ではありません。 また、
外国人から見ても、誤りを正すためのリーダーシップをとったとして大蔵省は評価される
のではないでしょうか。
護送船団方式とは優れた指導者がいて始めて効果があるのであり、個々の企業の利益のた
めに全体の利益を失っては何もなりません。 それも将来は合併などで消滅の運命にある
企業の罰金を少なくするために(本当に少なくて済むかどうかは疑問ですが)日本の金融
の元締めが世界的に評価を下げるようなことがあってはなりません。
もしも、この様な指導をすべきことを大蔵省が単に見過ごしていたと言うならば、問題は
もっと深刻です。
最後に、一方で誤りを認めながら、他方で、いやそれには理由があるから無罪だなどと主
張することが国際的に如何に理解しがたい事柄かは、海外に生活するものなら皆、判ると
思います。 単に日本の特殊性などといって理解を得られる問題ではありません。
大和銀行事件にはこの様な側面もあることを提起しておきたいと思います。
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