種の学名は 属名(Genus)+種小名(specific epithet) からなります。2つの名前からなるので二名法(二名式命名法)と呼びます。これはリンネ(Carolus Linnaeus : Karl von Linne)が確立した方法です。種名(species)は属名と小種名からなるというのが、本来の姿ですが、種小名(specific epithet)という呼び方は一般にはなじみにくいので、ここでは種名(species)を使うことにします。属名も種名(種小名)も単語1語からなります。属名と種名の後ろに命名者(発見者)と発表年をつけますが、省略される事が多いようです。命名者名も短縮形で書かれる場合があります。命名者が2人の場合には、& や et で名前を繋ぎます。 et はラテン語で、英語で言う and にあたります。
実際の種の表示に当たってはこの他にも厳密には色々な細かな規則や実体がありますが、おおよそ次のように理解していればよいと思われます。
属は判るけど種がわからない場合は、属名の後ろに sp. (speciesの略)を付けます。 (ラベル表示の場合にはあまり考えられませんが、複数の場合には spp. と表示します。例えば、Cattleya spp. は「カトレヤ属の数種類」を意味します。)
亜種(subspecies)がある場合、種名の次( 次に命名者や命名年があればその次)に亜種名などを付けます(実際にはあまりありません)。変種(varietas)の場合、種名の次に変種名を付けます。そして変種名の前に var. を付けます。ラテン語の varietas の略です。(分類上の)品種(forma)の場合、種名の次に品種名を付けます。そして品種名の前に f. や forma を付けます。ラテン語の forma です。
原種の場合、属名は大文字から、種名(種小名)は小文字から始まります。種の学名、変種の学名はラテン語で一般に斜体(イタリック体)で書かれます。(変種であるとの記号 var. は斜体にしません。)種名の性は属名の性に一致しています。栽培品種(個体)がある場合には交配種の場合に準じます。(例: Cattleya labiata var. alba 'Angerer' または C. labiata var. alba 'Angerer' 以下は属名を略称で表示します)
交配種の場合には、属名は大文字から、種名(種小名)も大文字から始まります。種名にラテン語は使えません。交配種の種名は1−3語で構成されます。栽培品種名(個体名ともいう)がある場合には種名の後になり、シングル・コーテーションで括ります。栽培品種名(個体名)は大文字で始まり、1−3語で構成されます。ラテン語は使えません。(ローマン体表示になり)斜体表示にはしません。(例: Blc. Norman's Bay 'Gothic')
未登録の交配種の場合、交配のサインである乗法記号 X 印を両親の学名(個体名がある場合には第三項目として表示)の間に付けて表します。(例: C. labiata var. alba 'Angerer' X Blc. Norman's Bay 'Gothic')
自然(交)雑種の場合、自然(交)雑種は(交)雑種の印である小文字の乗法記号 x 印を種間雑種の場合は種の前に(例: C. x dolosa 'Saibara')、属間雑種の場合は属の前に付けます。(例: x Lc. leeana 'Picardy')これらの表示は通常略される場合が多いようです。
その結果、既に登録されている自然(交)雑種は原種の場合に準じて表示されます。
また、未登録の場合は交配のサインである大文字の乗法記号 X 印を両親の学名の間に付けて表します。(例: C. nobilior X C. aclandiae あるいは L. esalqueana X C. aclandiae )
自然(交)雑種を栄養繁殖した場合には個体名をつけて、三命名法による表示とします。人工的にその組み合わせを交配した場合は交配種と同じように属名は大文字から、種名(種小名)も大文字から始まり、ローマン体表示になります。(例: C. Dolosa 'Tokyo')
ランの種名の登録制度は世界的に統一され、完備しているので、正しい種名が判れば原種にまでさかのぼって詳しく調べることが出来ます。その結果、栽培の方法や交配親としての価値なども判ります。このように重要な情報が記載されているのがラベルなので、ラベルのないもの(通称”ラベル落ち”)は価値が半減してしまいます。ラベルを無くさないように、また、正しい記載を心掛けましょう。
ラベルの形も色々ありますが、どのような形でなければいけないという規則がある訳ではありません。上記の表示法に基づきおおよそ次のように表示されるのが普通です。
(1)1列に並べて書く場合
(例1)原種の場合
C. | labiata | var. alba | 'Angerer' |
(例2)交配種の場合
Blc. | Norman's Bay | 'Gothic' | GM/RHS |
(2)2列にわたって書く場合
(例1)
C. | labiata | var. alba |
'Angerer' | ||
(例2)
Blc. | Norman's Bay | |
'Gothic' | GM/RHS | |
(3)未登録の交配種あるいは(交)雑種を書く場合
X |
(例1)1列に並べて書く場合
Blc. | Norman's Bay | 'Gothic' | X | C. | labiata | 'Angerer' |
(例2)2列にわたって書く場合
X | Blc. | Norman's Bay | 'Gothic' |
C. | labiata | 'Angerer' |
これは参考までですが、ラベルの裏に作業をした年月日を入れておくと、後で、大変役に立つ場合が多いものです。
(4)各項目の説明
1.属名はラテン語で1語です。カトレヤ類の属名は別表の 「属名リスト (カトレヤ類の属名と略称)」を参照して下さい。この中にあるはずです。属名をそのまま使ってもよいし、略称の方を使ってもよいでしょう。どちらの場合も最初の1文字は大文字で始めなければなりません。原種の場合にはイタリック体にします。
2.種名は原種の場合にはラテン語で1語です。全て小文字で表示し、イタリック体にします。交配種の場合にはラテン語ではなく、1−3語が使えます。最初の1文字は必ず大文字にし、ローマン体にします。
以上の1.属名と2.種名は必ず記入しなければなりません。
3.(変種名)はない場合が多いでしょう。変種名がある場合は小文字で var. と記入した後に変種名を続けます。原種の場合には var. はそのままにして、その後の変種名はイタリック体にします。個体名が付いている場合には省略することがあります。
4.栽培品種名(個体名)はラテン語は使いません。1−3語が使えます。最初の1文字は大文字にします。必ずシングル・コーテーションで囲みます。ダブル・コーテーションは間違いです。
5.入賞記録は入賞した賞の略称と授賞団体名の略称とを/で繋いで表示します。賞の略称と授賞団体名の略称は「About the Awards(主ならん展示会と賞について)」を参照願います。個体名が付いている場合には省略することがあります。
未登録の交配種あるいは雑種の場合には pod parent を先に次いで x を書いて pollen parent を書きます。♀ あるいは ♂ の記号をつけて表示する場合もあります。
(5)ラベルの裏側の使い方
ラベルの裏側は普通は何も書いてありません。しかし、次のようなデータを記載しておくと便利です。
1.入手年月日と入手先
記載例: P98.10.23(from A)
P=purchase パーチェス(購入の意味)
カッコ内は購入先名
2.植え替えの年月日
記載例: R99.04.25(根腐れ)
R=repotting リポッティング(植え替えの意味)
カッコ内は特記事項
3.株分けの年月日
記載例: D01.04.30(3F)
D=division ディビジョン(株分けの意味)
カッコ内(F)は前、(B)は後の部分、数字はバルブの数
4.咲いた花のデータ(年月日、数)
記載例: F00.11.20(4)
F=flower フラワー(開花の意味)
カッコ内は花の数
5.その他のデータ(施肥、消毒など)や注意事項
記載例: 無肥料期間
(11月-3月)
カッコ内は期間、量など
(参考)ラベルの裏側への記入例
P98.10.23 | R99.04.25 | むひりょう | F00.11.20 | D01.04.30 |