ボビンレース古典研究家 山口 伊津子(大阪在住)
16世紀にヨーロッパで始まったと伝えられているボビンレースは華麗なるがゆえに今日
でも多くの女性達の気持ちを優しく包み込んでいます。 「ボビンレース」とは木製の小
さなボビンに麻糸や綿糸を巻き、そのボビンを両手に持ち、左右に交差させて、様々な模
様を編み上げてゆく手工芸作法のことです。
ヨーロッパでレース技法が進むにつれ、あちらこちらでレース製作所が増えていったので
すが、中でもベルギーのフランドル地方が優れた作品を次々と生み出し、有名になってゆ
きました。 また、ブラッセル、ブルージュ、メッヘレン、アントワープ、バンシュ、
リールなどの町でも技巧に富み、歴史に残る特徴のある作品を残しています。 この歴史
有るボビンレースの作品はこれらの町の博物館か個人の収集家達によって保存されていま
すので、一度ベルギーの町へ出かけて実際に見て下さるのが一番良いでしょう。今では殆ど制作されなくなった貴重なボビンレース技法の伝達手段として、ベルギーには
ボビンレース学校や素晴らしいアトリエが残っています。 400年間、同じ技法で伝え
られ、続いてきたテクニックは、アンティーク・テクニックと言えるもので、現在、その
貴重なテクニックをもう一度じっくり学ぶということは、スピードと大量生産の現代社会
では、最高の贅沢なひとときであります。こういう私もボビンレースに魅せられた一人です。 主人の転勤でベルギーに住んで12
年間、ボビンレースの勉強ができたことに感謝しております。 最初はほんの楽しむ程度
のお稽古事と思っていたボビンレースですが、途中からは、その国の文化や歴史と密接な
関係があることが分かり、良い先生に出会えたこともあり、再度、一から勉強のし直しを
して過ごしました。
お陰様で、ベルギーに多くの友人を作ることが出来、楽しい想い出と共に帰国することが
出来ました。 これからは、私が現地で学んできた貴重なボビンレースの文化を日本の関
心を持って下さる方々に伝えて行くのが私の使命だと思います。
今は未だあまりにも長い間、日本から離れていたために、(逆)カルチャー・ショックを
受けながら、ボビンレースの制作に打ち込む毎日ですが、ゆくゆくは日本とベルギー間の
架け橋としてボビンレースを広めてゆきたいと思っています。話は変わりますが、大阪には立派な「ベルギー・フランドル交流センター」があり、常時、
国際交流の会が持たれていることは素晴らしいことだと思います。
もう、昨年になってしまいましたが、その「交流センター」で「世界に誇る伝統ボビンレ
ースとタピスリーの芸術作品展」が開催され、見事なアンティーク・レースの作品に接す
ることが出来ました。 当日は、ベルギーからはボビンレースの収集家、ミリアム女史が
来日されました。
彼女の収集作品の中でも特に素晴らしいバンシュ・レースの作品について、「マダム、こ
れは素晴らしい作品ですが、一体、何本のボビンが使われているのでしょうか?」と訊ね
たところ彼女自身、「私にもこの作品は素晴らしすぎて何本のボビンが使われているのか
分かりません、ボビンレースの奥深さは計り知れないものですよ」とのことでした。![]()
幾日もかかって作り上げられた白いレース。 それは優雅でまるで宝石のようです。
今や世界各国からベルギーのレースを目当てに人々が訪れます。
あなたも、ちょっと一日、ベルギーのレースの町、ブルージュを訪れてみませんか?
女性にとっては時間の止まったような、愛しい想い出が心に残ることでしょう。

本稿はベルギー在住十数年におよんだ山口伊津子氏が寄稿して下さったものです。
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