「EU 統合の系譜」

(大西健夫・岸上慎太郎編・早稲大学出版部)

[EU 制度と機能」

(大西健夫・中曽根佐織り編・早稲大学出版部)

「EU 政策と理念」

(大西健夫・岸慎太郎編・早稲大学出版部)

 ”分裂する欧州経済”をEU崩壊の構図と描き出す論者の著書には、ヨーロッパの生々
しい現実に触れ得るメリットがある。 しかし今回、叢書のワセダ・リプリ・ムンデイか
ら同時刊行された、この3巻の基調には、EU統合を、連邦主義的な立場から未来目標に
向かって前進するものと想定する理想主義的な視座があり、その具体的な”装置”を余す
ところなく解明している。

 執筆陣は、EU研究のなかでも特化した各分野で、優れた研究業績をあげてきた第一級
の研究者たちであり、総体として刺激的で、示唆される点が多い。 紙数の都合で一部寄
稿者だけを挙げると「統合の系譜」では田中素香、島田悦子、高橋進各氏ら、「制度と機
能」では金丸輝男、石川謙次郎、福田耕治各氏ら、「政策と理念」ではエミル・キルヒナ
ー、田中俊郎、南部宣行各氏らの論稿があり、それらに第一線の新進研究者の成果が続く。
「系譜」は8章、「制度」は10章、「政策」は11章で構成されている。

 マーストリヒト条約発効後一年余、ECに代わるEU(欧州連合)の名も定着し、1996
年には”政府間会議”において、統合最終段階の詰めが行われようという今日、この時期
をとらえて、EUの歩みは、その仕組みは、その働きは・・・・・と、理論的、歴史的に
問いかけ、将来の方向性を探ったこの3巻は意欲的な内容となっている。 まさしく時宣
を得た刊行である。 「編者あとがき」には「専門家の参考となり、初学者への知的刺激
となることを望む」趣旨が述べられている。 大学などのテキストとしても格好であり、
現代EU統合論に前向きな一石を投じたみごとなできばえである。


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