<ごまかしのテクニック>

コーティング放射線レーザーフラクチャー詰め物ダブレット紛らわしい名称

宝石業界では石の見かけを向上させるために各種の処理を行うことがなされてきました。
特に色石の業界では処理した石をエンハンスメント enhancement(長年業界で行ってきた
業界が承認した処理)とトリートメント treatment (放射線処理など業界で承認してい
ない処理)に分けて考える方法が設定されています。 ダイヤモンドの場合には近年まで
はこの様な処理について議論をする必要がなかったのですが、今やフラクチャー詰め物処
理(後述)の登場で処理についての方法や周知などをどの様になすべきかが問題になって
きています。

コーティング処理

coated diamond
石の表面に別の組成の被膜を作る処理法です。
具体的には、眼鏡のレンズに表面反射防止のコーティングをするのと同じ手法です。
蒸着物質(多くは弗化物)を高い真空中で加熱蒸発させて、表面に薄膜を凝着させる真空
蒸着の方法によっています。 蒸着品を加熱することにより、膜の蒸着を硬くするハード
・コーティングが可能になりました。 また、蒸着物質も弗化物だけでなく、チタニア、
ジルコニア、アルミナ、シリカなどの酸化物も可能になり、コーティング膜も単層から複
数の層に出来るようになってきました。 その結果、最高のものは13層以上で硬さはモ
ース硬度で8あり、しかも膜の除去は濃硫酸や王水などでは不可能で弗酸処理によるほか
はないという硬い処理がなされているとのことです。

放射線処理

radium-treated, cyclotron-treated, pile-treated, electron-bombarded diamond (T)
ダイヤモンドの黄色ないし褐色石で不良色のものを、放射線処理で色を改善する方法です。
放射線処理はラジウム塩あるいはラドン、コバルト60の照射、電子線加速器、なかでも
ファンデグラーフ加速器による着色では、淡いアクワマリン・ブルーから帯緑青色までの
色調があります。
そして現在、主として用いられている原子炉処理へと移行してきました。
処理石はグリーンとその後の熱処理によりブラウンとイエローにピンクが得られます。

フラクチャー詰め物処理

fracture filled diamond (F)
場合によりフラクチャー(亀裂)への詰めものをします。 詰めものは鉛含有率の高い特
殊ガラスの一種が使われます。 詰めものはクラリティは改善されても黄色がかって見え
ることが多いものです。 またセッティングや再カットのために高熱を加えると詰めもの
が溶け出すことがあります。
この処理ダイヤモンドをある角度で持った場合に普通はフラッシュ効果が見えます。

レーザー処理

laser-treated diamond (E)
ダイヤモンドの中の結晶をとらえるためにレーザー光線が使われます。
レーザー光線で孔を開け、内部の結晶を焼却し、蒸発させたり、あるいは酸を流し入れて、
黒い含有物を除去します。

ダブレット

doublet
これは張り合わせ石あるいは組み合わせ石とも言われるローマ帝国時代から存在した処理
法です。
二個のダイヤモンドを上下ともに使った本ダブレットと上部のクラウン部分に本物のダイ
ヤモンド、下部のパビリオン部分に代用石を使ったセミ・ダブレットがあります。
ダイヤモンド・ダブレットは大抵ふせ込みの石留めがしてあり、ジプシー・セットと呼ば
れています。 こうすると接着部分を被ってしまえるからです。

紛らわしい名称

false name
本来の宝石名とは別に商業上、俗にいう呼称フォールス・ネーム(False name)があるも
のがあり、注意を要します。 フォールス・ネーム以外にも間違った名前(Misnomers)
があるので、挙げておきます。
ここに挙げた名前以外にも間違いやすい名前があると思われますので、注意して下さい。

ダイヤモンドの名が付いてダイヤモンドでないものは次の様なものがあります。

アラスカ・ブラック・ダイアモンド Alaska black diamond (アラスカ産のヘマタイト)
アラスカ・ダイアモンド Alaska diamond (水晶)
アーカンサス・ダイアモンド Arkansas diamond (アーカンサス産の水晶)
ボヘミアン・ダイアモンド Bohemian diamond (水晶)
ブラジリアン・ダイアモンド Brazilian diamond (ブラジル産の水晶)
(ブラジル産のダイヤモンドはただダイヤモンドと呼びます。)
ブリストル・ダイアモンド Bristol diamond (イングランドのブリストル付近で採れる水晶)
バクストン・ダイアモンド Buxton diamond (イングランドのバクストン付近で採れる水晶)
ケープ・メイ・ダイヤモンド Cape May diamond (ニュージャージー南部で採れる水晶)
セイロン・ダイアモンド Ceylon diamond (現在のスリランカ産の無色のジルコン)
ハワイアン・ダイヤモンド Hawaiian diamond (水晶)
ハーキマー・ダイヤモンド Herkimer diamonnd (ニューヨークのハーキマー社の水晶)
ケニヤ・ダイヤモンド Kenya diamond (合成ルチル)
マタラ・ダイヤモンド Matura diamond (スリランカ産の無色のジルコン)
モーゴク・ダイヤモンド Mogok diamond (ビルマのモーゴク産の無色のトパーズ)
ペンシルバニア・ダイヤモンド Pennsylvania diamond (ペンシルバニア産の黄鉄鉱)
ラジウム・ダイアモンド Radium diamond (煙水晶)
レインボー・ダイアモンド Rainbow diamond (合成ルチル)
ラングーン・ダイヤモンド Rangoon diamond (ビルマ産のジルコン)
ライン・ダイヤモンド Rhine diamond
 (無色のベリルまたはラインストン=ガラスなどで作られた模造のダイヤモンド)
サクソン・ダイヤモンド Saxon diamond (トパーズ)
シベリア・ダイヤモンド Siberian diamond (無色のトルマリン)
シミリ・ダイヤモンド Simili diamond (水晶もしくはガラス)
スラブ・ダイヤモンド Slaves' diamond (無色のトパーズ)

なお、上記とは別に、例えばフラクチャー詰め物処理をしたダイヤモンドを改良
(エンハンスメント)ダイヤモンドと呼ぶなど紛らわしい呼び方をする場合があるので
注意が必要です。 


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