(1)「美しい」こと (2)「耐久性を持つ」こと (3)「希少価値がある」ことの三条件が揃っていなければなりません。
どれか一つが欠けても宝石としては価値が低くなり値段も安くなります。
ダイヤモンドはこの内の
(2)「耐久性を持つ」こと、(3)「希少価値がある」ことは充足しても当時はまだ(1)「美しい」ことは充足していなかったからなのです。
ダイヤモンドは結晶で産しますが硬度が硬くても脆いので完全な結晶のまま見つかることは少ないのです。 その上、硬すぎて加工が出来なかったのです。 ベルギーでダイヤモンド粉末を使ってダイヤモンドを研磨する方法が発明されたのは十五世紀になってからです。
かくして、加工技術の確立によりダイヤモンドは宝石の王様となったのです。
実は現在までに数多くのダイヤモンド鉱山が開発され、大規模な投資がなされた結果、今やダイヤモンドの原石は生産過剰なのです。 その上、ご存知のように人工ダイヤモンドも出現しているのです。 ただ現時点では宝飾用のダイヤモンドとしては採算が採れないだけにすぎません。 生産過剰なうえに人工的に幾らでも作れるダイヤモンドですが、それにも関わらず、現在はデビアス社並びにそのシンジケートが世界のダイヤモンドの供給をほぼコントロールしているので、価格が安定しているのです。 それ故、人々はダイヤモンドは希少価値があり=財産的な価値があると思いこまされているのです。
一般的にはそのように言えると思いますが、欠点もあるのです。 前述のように脆いのです。 ダイヤモンドの靭性は
7.5 で水晶と同じですから落とせば割れる可能性はあるの
です。 ダイヤモンドは約 1,000
度で燃えてしまいます。 ですから、火事にあえば灰
にならないまでも、ダメージを受けると考えた方がよいでしょう。 要するに「耐久性を持つ」といっても完全ではないということなのです。
ダイヤモンドは美しいとは限りません。 早い話が工業用ダイヤモンドは美しいでしょうか? 宝飾用だって、グレードの良くないものはやはり美しくはありません。 宝飾用のダイヤモンドには品質基準ができているのでグレードの良いダイヤモンドはまちがいなく美しいといえます。
それはさておき、鉱物の中でダイヤモンドが一番よく輝くかと言えばそうでもないのです。 合成ルチルの方が屈折率が高く、従って臨界角は小さく、全反射領域は広い。 すなわち、輝きが多いことになるのです。
虹色のファイアと呼ばれる現象もダイヤモンドよりも大きい鉱物も小さい鉱物もあり、好みの問題でもあるのです。 ですから一概にダイヤモンドが一番美しいとは言えないのです。 しかし、ダイヤモンドが最も美しく見えるカットを開発したトルコフスキーを始めとする多くの人々の努力が美しさを支えてきたことも否定できません。
こうしてダイヤモンドを眺めてみると宝石が必要としている要件をそこそこに満たしていることが分かります。 しかし決して完全ではありません。 ただ、何にもまして関係者の努力によって宝石としての価値を守るためにあらゆる仕組みが考えられ、構築されているということが言えます。
ダイヤモンドはいつ、何処で、どの様にして出来たのでしょうか? これは現在でも謎の部分があり、充分に解明されているとは言えません。 しかしながら、判ってきたことも多いのでそれを少し述べてみます。
ダイヤモンドは紀元前七、八世紀頃にインドで発見されてから、ずうっと川床の砂礫の中からひろわれてきました。
1870 年に南アフリカの農場の黄色い土 Yellow ground
の中からダイヤモンドが見つかってからは川床の砂礫の中よりも数多くのダイヤモンドが黄色い土の中から見つかる様になり、ダイヤモンドの採掘は対象が川床の砂礫から黄色い土に変わりました。
ところが黄色い土はすぐに掘り尽くされ、その下から硬い青黒い岩石
Blue ground がで てきました。 この岩はキンバレー岩 Kimberlite
と呼ばれ、これが実はダイヤモンドの原岩でした。 黄色い土はこのキンバレー岩の風化土壌だったのです。 このキンバレー岩はアフリカ、シベリア、南北アメリカ、オーストラリヤなどの大陸の上に”開いたパイプの形”をして産します。
キンバレー岩のすべてにダイヤモンドが含まれている訳ではありません。
キンバレー岩の大部分は 7000 万年から 1 億 2000
万年前の白亜紀に生まれています。 しかし、その中に含まれているダイヤモンドは
45
億年も前に結晶したものがあることが判っています。 これはキンバレー岩の中でだけ結晶したのではなく、キンバレー岩が地上に噴出した時に地下で一緒に取り込んできた岩石(捕獲岩片)、主にかんらん岩
Peridotite やエクロジャイト Eclogite
にもダイヤモンドが含まれていたと考えられます。
ダイヤモンドに含まれる含有物から、かんらん岩型(ペリドータイト)をP型ダイヤモンド、エクロジャイト型をE型ダイヤモンドと呼びます。
P型ダイヤモンドは深さ 150-250km で、温度 1100-1500
度で結晶し、E型ダイヤモンドは深さ 140-200km で温度 1000-1450
度で結晶したと推定されています。
P型ダイヤモンドはもともと地球生成時からマントル Mantle
内に含まれていた炭素がもとになっていると考えられています。 地球は微惑星が遠くから降り注ぐように集まってできたといわれています。地上に落下した隕石の中で、炭素質のコンドライト
Chondriteと呼ばれる隕石は、かなりの量の炭素や有機物を含んでおり、太陽系の始原物質に最も近いものとして注目されています。
E型のダイヤモンドは種々の炭素が含まれているようで、海洋の底で玄武岩(Basalt)やその上に堆積した物質がプレート運動で地底深くに沈み込み次第に圧力が高くなりエクロジャイトに変わったときに含まれていた炭素や有機物がダイヤモンドに変わったものと思われます。 エクロジャイトのダイヤモンド含有率はキンバレー岩の
1000 倍以上であるといわれています。
ダイヤモンドの中に含まれる放射性元素を測定することにより、ダイヤモンドの生成の年代を知ることが出来ます。 南アフリカのプレミア鉱山で測定したところ、一番古いものは
45 億年前、一番新しいものは 1.2
億年前にできたものであることが判りました。
このキンバレー岩は
1.2億年前に噴出したことが判っていますから、一番新しいダイヤモンドはキンバレー岩のマグマの中で結晶したことが判ります。 また、一番古いダイヤモンドは地球が
45.5
億年前に誕生して間もなく結晶したものと思われます。 地表に現れている岩石で一番古いものはグリーンランド西海岸イスア地方の変成岩で、約
38
億年前のものとされていたので、このダイヤモンドは地球上最も古い石ということになります。