<ダイヤモンドの加工>

磨かれる前のダイヤモンドは、光沢も特徴もない只の結晶体ですが、多くの工程を経て初 めて芸術的な形と魅惑的な輝きが与えられるのです。 各工程は、それぞれの専門家によ って行われますが、要約すると次のようになります。

検査 | クリービング | 鋸引き | 胴削り | カット | ガードルの面取

原石検査とマーキング inspection and marking


天然産の原石の形は規則正しいことは少なく、多くの場合形状不完全や欠陥の多いもので す。 加工に当たっては、まず、原石の形状、結晶形、双晶、不純物、亀裂などの有無を 入念に検査、選択して、それにより品位の分類を行い、用途並びに有効な加工法を決定し ます。 特に加工に大きく影響する加工方向の決定、つまりオリエンテーションには、計 器測定をいちいち実施するわけにはいかないので、実際上は加工者の高度な熟練によって、 原石面に見られる食像や条線(これを石目、あるいは木材と同じように木目と呼びます) を見て4ポイント、3ポイント及び2ポイントの石の判定を行い、結晶軸もしくは結晶方 向を判定して加工にあたっています。 ダイヤモンドを効果的に取り出すためには、重さ の損失を最小限にし最大の透明度を得なければなりません。 そして劈開または鋸で引く 方向と使用する鋸刃の厚さをペンとインディア・インキで印をつけます。

クリーバー cleaver による劈開 cleaving


原石の不純物や不規則な部分を取り除くために、1個の原石を二つまたはそれ以上に分割 する技術です。
原石をいくつかに分割したり、欠陥部を取り除くのに、研磨作業では能率的にはいかない ので、劈開を利用するのです。 不規則な形のダイヤモンド原石でも、必ず六面体、八面 体、十二面体のどれか一つに相当する面を持つものです。 ダイヤモンドの劈開性は完全 なので、その可能な方向 (cleavage grain) は、結晶の八面体面に平行な方向になります。 原石を劈開するには、まず原石を木製のホールダーまたはドープの上に即乾性のセメント でセットします。 より小さな木製ドープ上にセットされたもう一個の鋭いダイヤモンド を使って劈開すべき部分に切り溝をつけます。 そしてタガネ状の劈開ナイフをそこにあ てて特性のハンマーでするどく叩くと原石は劈開面上で二つに分割されます。 この劈開 は結晶体の石目と平行になります。 作業そのものは単純ですが、一歩誤ると高価な原石 を粉々に破砕してしまうので、結晶に関する知識、多年にわたる経験、そして細心の注意 が必要とされます。

ソーヤー sawyer による鋸引き sawing


普通一個の原石を中央で二分割して二個取りにする場合に使用します。 切断可能な結晶 の方向 (sawing grain) は限定されます。 方向を決定した原石を特殊セメント(石膏と ニカワを混ぜ合わせて練った糊)で銅製のドープの中にセットします。 糊が固まるまで 一定時間焼いた後、原石は高速 (4500-6500 r.p.m.) で回転する垂直の鋸刃にセットされ ゆっくりと鋸引かれます。 切断刃は特殊な燐青銅で作られた極薄 0.06-0.15mm の円板 で直系 60-75mm(時に 100mm)です。 油を混ぜたダイヤモンドの粉でコートされており、 外周にダイヤモンドの粉のペーストをローラーで圧入しながら鋸引きします。 通常1カ ラットのダイヤモンドをカットするのに2時間以上かかります。
ですから、大きな原石の場合には何日も1週間以上かかる場合もあります。
最近では、自動鋸引き機械 automatic sawing machine と レーザー光線を使用した機械 laser sawing machine が開発されています。
自動圧力制御システムとコンピュータによって制御された自動鋸引き機械は非常によい結 果と生産性の向上をもたらしました。 また、レーザー光線のおかげで今までは困難だっ た石目もカットすることが出来るようになりました。 レーザーはまた面取りにも利用さ れています。 しかしながら、レーザーが旧来の鋸引きの方法に取って替わるには至って いません。 それは一つにはレーザーによるカットは線条の痕を残すことです。 次いで 指摘されるのは、非常に高額な投資を必要とするので、小さな石の処理には採算が合わな いことだと言われています。

ブラッター brutter による胴削り bruting/girdling


胴削りは原石を荒く成形し、デザインしやすくするために丸みを持たせる工程です。 鋸 引いた(または劈開した)原石を今度は旋盤状のブルティング機のドープにセットし、 もう一つのダイヤモンドをセットした工具に当てて回転させ、原石の外周の荒削りをして 丸い形にします。 外周つまり胴を仕上げると言う意味でガードリング girdling とも言 われます。 回転を与えるのに始めのうちはペダルで漕いで与えていましたが順次電気の モーターに換えられ、普通1分間に 1500 回転以上ものスピードが与えられます。 自動 胴削り機械 automatic bruting machine の登場です。
自動胴削り機械 automatic bruting machine は ウェスターン・ダイヤモンド・ツールズ (W.D.T.) である程度の量産に耐えるものが作られていますし、最高1分間に 5000回転ま で可能な機械やポータブルの機械がHRDのダイヤモンド科学技術研究センター (W.T.O.C.D.) で購入可能です。
これらの機械は操作も簡単で仕上がりも良くなりました。
(なお、加工中にできたダイヤモンドの粉は注意深く貯蔵器に集められ、再利用されます。  しかし、それでも胴削りの途中の状況を観察するには、その都度機械を止めて目で見てみ なければなりませんでした。 そして、場合により微調整を行い、また削るといった具合 です。 ところが、多くの場合は調整を必要としない段階であったり、逆に微調整をする 時期を逃してしまったりするものなのです。 ここに登場したのが ストロボスコープ stroboscope と呼ばれる機械です。 この機械は胴削り機械が高速で回転している時にあ る方向からその回転数と同じタイミングで極く短い光のインパルスを発しますと、まるで 機械が止まっているかのようにセットされた石の同じ面だけが見えるので、わざわざ機械 を止めてみなくとも、削られている状況が把握できるのです。 この機械の導入によりブ ルッターの大幅な省力が計られる事になりました。 このストロボスコープ stroboscope はHRDのダイヤモンド科学技術研究センター (W.T.O.C.D.) で開発されました。

ポリッシャー polisher による研磨 cutting and polishing


最後にダイヤモンドは、研磨砥石車 Polishing mill の上で研磨されます。 砥石車は、 鋳鉄製の水平円盤 polishing wheel or scaife で、ダイヤモンドの粉が滲み込ませてあ ります。 丸みをつけられた原石は、任意の方向に回すことができるドープ dop の中で、 クランプ clamp によって締め付けられ、タング tang にセットされ円盤に押しつけられ ます。 まず、クラウンとパビリオンの両方に四面を配置します。 残りの面はドープを クリックして、すでに作った面のリブの部分に置きます。この様にして上下合わせて 16 面とテーブル(場合によってキューレットも)をつけます。 この工程はクロスワーク cross work 及びエイトサイド研磨 eight-side polishing と呼ばれて、クロスカッター cross cutter 及びエイトサイドワーカー eight side worker が行います。
次いで、クラウン部分の 24 面とパビリオン部分の 16 面がブリリアンティア brillianteerer によって研磨されます。
1970年頃から、自動研磨機械 automatic polishing machine が登場します。 デビアス の子会社でロンドンのピエマティック機械会社 Piermatic Machine Ltd.、現在のボナス 機械会社 Bonas Machine Tools Ltd. の自動研磨機械が 1971 - 1976 年にかけて作られ、 1980年には全く新しいコンセプトに基づいてマイクロプロセッサーを装備した自動研磨 機械が開発されました。 しかし、2ポイントや3ポイントの石など複雑な石には対応 出来ませんでした。 その後改良が加えられ、全ての種類の石に対応できる自動研磨機 械が開発され導入されています。

ガードルの面取り


ガードルには3っつのタイプがありますが、生のままのもの (bruted girdle)、磨いた もの (polished girdle) よりも面取りをしたもの (faceted girdle) の方が反射の面 からも良いとされています。
これはグレーディングの際にガードルの厚さの許容量にも現れてきます。 ガードルに 面取りするのは米国の L.H.Roselaar の開発したマルチ・ファセット・カット Multi-facet cut というガードルに 40の面をつけたのが始まりと言われていますが、 現在では上下のガードル・ファセットの間に各4面、合計 64 の面をガードルにつけた ものが普通で、カラット数の大きなものには各5面、合計 80 面をガードルにつけたも のがあります。 これは機械で容易に面取りすることが可能です。

ダイヤモンドの加工の文頭へ戻る
次項ダイヤモンドの歴史へ