日本人会会報より

全日空ブリュッセル営業所

新谷耕司



   「バードウォッチング」という言葉を聞いて、皆様は何を連想なさいますか?

   9割以上の方は「紅白歌合戦!」と答えられるのではないでしょうか。

   バードウォッチング → 日本野鳥の会 → 双眼鏡ごしの票のカウント → 変な人達

   という具合に頭の中を連 想が駆け巡った事でしょう。        

   「これは某国営TV局が長年に亘って作り上げてしまつた日本人独特の反応であり、

   夜な夜な 公園に出没する良からぬ輩の所業とあいまつて、とかく日本人のもつ

   「バードウォッチング」 に対する第一印象は良くないようです。

   本日は、その様な偏見にも負けず、「バードウォッチング」の色々な楽しみ方について、

   クイズ形式でお話してみたいと思います。

   バードウォッチングの第一歩は、童心に帰って、身近な鳥をじつくりみることから

   始まりま す。普段何気なく見過ごしている『鳥』という身近な動物を一度じっくり

   観察してみて下さい。きつと今まで気が付かなかつた世界が開けてくると思います。


皆さんは、スズメの顔をじつくり見た事がありますか?

日本のスズメとベルギーのスズメは同じ顔でしょうか?

   ベルギーには、日本のスズメ (Tree Sparrow) もいますが、もう一種類違ったスズ

   (House Sparrow) が生息しています。前者は頭が褐色で、頬に黒い点があるのが特徴

   ですが、後者は頭が銀色がかつており、頬の黒点がありません。両者ともに広く

   ヨーロッパ全土に分布していますが、当地ブリュッセルにおいては、House Sparrow の

   方が多いようです。

   私の小学生の娘がベルギーへ来て最初に教えてくれたことは「パパ!ベルギーのスズメは、

   やっぱり外人の顔してる!」でした。そう言われて、House Sparrow をじつくり観察して

   みますと、その銀髪と白い頬が不思議なことに西洋人の顔立ちによく似て います。子供は

   本当に物事を良く見ているものですね。



スズメ (House Sparrow)

学名:Passer domesticus

   鳥の名前と顔が一致するようになりますと、次には、その鳥にまつわるエピソードなどを

   調べてみるのもよいでしょう。また、国鳥や自分の出身地の鳥、(県鳥)が何であるか

   調べてみて下さい。ちなみに、日本の国鳥は『キジ』ですが、ベルギーの国鳥は

   『チョウゲンボウ』という日本でもよくみかけるタカの一種です。



チョウゲンボウ (Common Kestrel)

学名:Falco tinnunculus


ブリュッセル市内の公園の池などに、時として水面を真っ白にするほど

群れ集まつている、カモメを見かけることがありますが、

           このカモメは日本のカモメと同種でしょうか?

   YES。この鳥も欧州各地に広く生息しており、英名を Black-headed Gull といい

   ます。夏になると頭の前半分が真っ黒になることからこの様な名前が付けられました

   が、日本でこの鳥を『ユリカモメ』とよんでいます。ユリカモメでピンとこない方で

   も、在原業平が「名にし負わば、いざ言問わん都鳥、吾が思う人はありやなしや」と

   詠んだ泉国のあの鳥といえばおわかりでしょう。ちなみにこの鳥は、「東京都の鳥」

   でもあります。また、『ミヤコドリ』という鳥は、ユリカモメとは全く別種の鳥で、

   日本では稀にしか見られない珍しい鳥ですしかしうれしいことにベルギーの海岸地帯

   ではミヤコドリの数が多く、毎夏繁殖期にかわいい雛を育てている姿を真近に観察す

   ることができます。



ユリカモメ (Black-headed Gull)

学名:Larus ridibundus



RINGやE411、E40などの道路脇や自宅の裏庭などで良く見かける黒

と白のコントラストが鮮やかなカラス大の鳥(おなかと肩と翼上面の白さが目

          立つ)は何でしょう?

          フワフワと長い尾羽をなびかせながら飛び回ったり、時には地上にも降りる

          ことがあります。声はギヤーギヤーとかカチカチとか聞こえ、おせじにも良

          い声とは言えませんが・・・・。中程度に高い木に、比較的大きな丸い巣を

          かけます。

   和名『カササギ』。英名 Magpie  仏名 La Pie。

   ヨーロッパには広く分布していますが、日本では、九州の佐賀県にしかいません。

   日本のバードウォッチャーがわざわざ飛行機や新幹線に乗って、佐賀県までこの鳥を

   見に行くほどの有名な『珍鳥』です。



カササギ (Magpie)

学名:Pica pica

   実は、この鳥は戦国時代まで日本には生息しない鳥でしたが、豊臣秀吉が朝鮮侵攻の際、

   朝鮮半島に多く生息するこの鳥に出会い、『勝ち勝ち』と鳴く縁起の良い鳥として九州へ持ち

   帰り、佐賀県だけに定着したと言われています。なぜ全国へ広がらないのかは謎ですが、たぶ

   ん飛翔力が弱いためではないかと思われます。関東地方ご出身の方なら『オナガ』という鳥を

   ご存じかと思いますが、カササギはオナガに非常に近い種類の鳥です。そう言えば、オナガも

   関東地方にしかいませんね。

   ある程度、鳥の素性が解ってきますと、次には生態に興味がわくことが多いようです。ただ、

   鳥を見ているだけでなく、目の前の鳥の生態を記録しておきたいとの理由から、カメラ撮影や

   さえずりの録音などに凝ってゆく方が多いようです。


  一九九三年の冬に、千葉県習志野市にある『谷津干潟(谷津遊園の跡地の

 一部で宅地開発の波に飲み込まれず、国際湿地・水鳥保護条約登録地として

           永久非開発が決まつた干潟)』にただ1羽で飛来し、その珍しさから全国の

           野鳥カメラマンを興奮のるつぼに陥れた鳥は何でしょうか?

           結局、翌年の春まで越冬し、のべ何百人というカメラマンが全国から押し

           寄せました。 朝日新聞でも報道されました。

   『ソリハシセイタカシギ』。くちばしが上に反り返っており、足が非常に長く、白と

   黒のコントラストがはつきりしたとてもエレガントな鳥です。日本では珍鳥中の珍鳥

   ですが、ベルギーでは西部海岸地帯で簡単に観察できるコモンバード(ふつうの鳥)

   です。夏期には、やはりかわいい雛を育てている姿を真近にみることができます。」



ソリハシセイタカシギ (Avocet)

学名:Recurvirostra avosetta

   たいていの鳥の名前が分かるようになり、鳥を見ることが習慣化してくると、鳥が生息して

   いる森林や湿地や海岸などの『環境』そのものにも興味が湧いて来るようになります。

   鳥の生息状況を通して環境の破壊度を推定することもできるようになります。


日本のカラスは『ハシボソガラス』と『ハシブトガラス』の2種類が代表格

ですが、毎朝銀座に出勤し、都会のゴミをあさつているのはどちらのカラス

          でしょうか?

   『ハシブトガラス』。『ハシ』とはクチバシのこと。

   くちばしが大きく太く、獰猛な顔付きをしています。都会の環境にたくましく順応し

   ています。

   『ハシボソガラス』の方は森林性のカラスであり、くちばしは細長く、顔付きも穏や

   かです。ハシボソガラスは都会では数少ない鳥であり、環境が破壊されていない森林

   の周囲でよく見かけます。ある森や林の中で一年前に比べて、ハシボソガラスの数が

   減り、ハシブトガラスの数が増えている湯合には、ここ一年の間に環境破壊が進んだ

   と判断することができます。ちなみにベルギーには、ハシボソガラスの方しか生息し

   ていません。



ハシボソガラス (Carrion Crow)

学名:Corvus corone


   以上、バードウォッチングの楽しみ方のごく一端をご紹介いたしましたが、バードウォッチヤ

   ーが、ただ鳥の数を数えて喜んでいるだけの人種ではないことがお分かり傾けたのではないで

   しょうか?

   バードウォッチングは、お金のかからない趣味でもありますし、体力もいりません。ご年配の

   方でも小学生でも簡単に始められるグローバルな趣味です。旅行の楽しみとも裏腹の関係にあ

   りますし、おいしい空気を吸いながらの森林溶として、健康増進にもってこいの趣味です。

   しかも、ヨーロッパに分布している鳥達の多くは、日本の鳥と共通種であり、ヨーロッパ在住

   中に覚えた知識は、日本に帰ってからも生かす事が出来るのです。論より証拠。百聞は一見に

   しかず。まずは、お気軽に始めて見て下さい。

   とは言え、『きつかけがつかめない』という方がいらつしやると思います。

    ご安心ください!今般、有志が集まり、『バードウォッチング同好会』を発足させました。

   興味のある方は、月一回の月例探鳥会に是非ご参加ください。初心者の方も大歓迎です!

   「バードウォッチング同好会」概要をご参照下さい。


感想等は、ooka@nihongo.com までお願いします。

1997年3月1日


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「バードウォッチング同好会」概要

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