分娩について

出産は全くの個人の体験ですから、人によってずいぶん違うと思います。 すごく長かっ
た人、短く感じた人、大変だった人、楽だった人。 また、分娩にもいろいろなスタイル
があります。 これから何回かに渡って、個人の体験談をご紹介していきたいと思います

無痛分娩 | 座位分娩 | 計画出産 | 自然分娩


d.自然分娩 (accouchement naturel)

 出産予定日の四日前、夜8時に破水。 すぐ病院に電話しました。 「私は、Dr.○○の
患者です。」「破水しました。」「今から行きます。」用意してあった英語が通じたので
一安心。 これも用意してあった荷物を持って、夫の車で出動した。 夜間なので救急の
入り口から入る。 とにかくはじめに出会った白衣の人に、医師にもらってあった封筒を
渡した。 読んでもらえば私が何者なのか、何のために来たのか、何をしてもらうべきな
のかがわかる有り難いカードが入っていたのだと思う。
 陣痛室に案内されるとすぐ当直のキネジストが来てくれた。 私は病院の妊婦教室に通
っていたが、その指導に当たるキネジストと出産に立ち会うキネジストは別の人だとこの
時知った。 0時、子宮の収縮が5分間隔になったころから痛みが始まる。 3時、とに
かく痛いので、様子を見に来たキネジストに「Mal! Mal!]と訴えると、「Do you need
some injection?」と聞かれた。 ほとんど意地で断る。 それでも生まれるのは午前8時
頃だと思うと言われたときは、そこを何とか早く、とお願いしたかった。 願いが胎児に
伝わったのか、おなかの中で猛烈な頭突きをされたと感じるとあっという間に子宮口が開
き、4時過ぎにはベッドに寝たまま分娩室に運ばれた。
 医師が来るまでは産みたいのを我慢するように、と言われ待つこと20分。 医師が到
着してから分娩台に這うようにして移動した。 分娩台の両側にそれぞれキネジストと夫
が立つ。 仰臥の姿勢だが、医師の「Possez!」という指示でいきむ時は夫が背中を支える。
キネジストも呼吸のタイミングを教えたり励ましたりしてくれる。 医師の指示で最後に
ゆっくり力を入れるとうぶ声が聞こえた。 午前5時「Girl.」と言いながら医師が赤ん
坊を持ち上げ私のおなかに乗せた。
 このあと赤ん坊について歩いていた夫によると、赤ん坊は産湯のあと暖かい電灯の下に
いたということ。 それから母親の処置が終わるのを待って、赤ん坊は側に連れてこられ
母子同室の入院生活が始まる。
 破水したのが夕食の支度中だったため、お腹が空いて「何か食べたい。」と、キネジス
トに訴えましたが「吐くからだめ。 産んでからなら何でも食べていいから。」という返
事でした。(日本で産んだ人は、食べることができたそうです。)夫も空腹でしたが、側
にいてほしかったため「自分だけ食べに行ったら看護婦さんに叱られるのよ。」と脅しま
した。 次に産むときは、荷物の中にクッキーを用意します。
 初産でしたが、医師を信頼していたのでその顔が見えたとたん不安が消えました。 子
供が出てくるまでの間「Tre bien.」「Very good.」と何度も褒められ、自信をもって産
むことができました。 子供がでてくるのを補助することに心身が集中すると痛みも問題
になりませんでした。
 夫が「頭がでた!」と報告してくれたのももちろん何よりの励ましでした。 産んだ後、
医師に「Very good job.」と言われ、夫が大事そうに娘を抱いているのを見たとき大変誇
らしかったです。
 夫にとってはというと、何かのアンケートの「ベルギーに来て一番楽しかったこと」の
項に「出産と育児」と答えていました。


本稿は PETITS-POIS a.s.b.l.の了解を得て、PETIT-POIS No.5(01/93)より転載させて
いただきました。 なお、転載にあたり、編集および若干の変更をしております。

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