第3章

真珠の鑑定と評価



 
真珠の鑑定と機器 | 真珠の評価


真珠の鑑定と機器


真珠


真珠の表面の美しい幾何学模様(結晶成長模様)x 90

真珠鑑定の環境 | 真珠鑑定の手順 | 観察する真珠の部分と機器 | 各種の鑑別の概要 | 真珠鑑定用機器 | 真珠鑑定書



真珠鑑定の環境

1.自然光の場合は北光線導入装置
  人工光の場合は標準照明装置
  (I.C.I. 標準光源 C 6、500゚K またはこれに近いもの)を装備する。

2.鑑定時の明るさは 300-2、000 ルックス、1、000 ルックス前後が適当

3.鑑定室は無彩色、フードは黒色、検査室は中明度、
  鑑定盤のビロードは色を見る場合は白色、光沢を見る場合は黒色

4.一般には 45゚ の方向から照明して、垂直の方向からみるようにする

真珠鑑定の手順

素性が全く不明の真珠があったとき、どのような手順で鑑定するのでしょうか?

 

(1)感触による観察

真珠に触れば、その重さ、感触などから、人造真珠であるかどうかは経験的に判るものです。
(人造真珠は概して柔らかい感じに対し、本物は硬い感じ)
また、珠同士をいこすれば、人造はつるっとしているのに、本物は引っかかりをかんじます。

 

(2)目視観察

真珠鑑定の環境において、自分の眼で、真珠を仔細に観察します。
北光線の下で、その色、光沢、場合により形に不自然さはないか
(蛍光が感じられれば、本物の可能性がたかくなります)
特に窪みや突起の部分をルーぺを使って観察します。

次に、眼にまぶしさを感ずる位の強い光(2万ルックス以上)の下で、同様に観察します。
普通の明るさでは見つけにくい、表層部の状態や微小なキズ等が見い出せます

特に孔口の付近は入念に観察します。処理の痕跡が集中的に現れるからです。

 

(3)顕微鏡観察

光源を内蔵し、対物レンズを通して物体に光を照射する金属光学顕微鏡で百倍に拡大して、
先ず表面を見、結晶成長模様を確認します。
人造真珠、真珠様物質、光輝層真珠、コーティング処理、アワビ真珠の確認ができます。

次に、偏光装置を使って、表層部や窪みを観察し、単に顕微鏡で普通に見た場合を補完します。
また、着色黒真珠の確定など化学処理濃厚着色処理(着色過度真珠)のめやすをつかみます。

 

(4)光透過法による内部観察

真珠を透かしてみて内部の概要をつかむルシドスコープ(Lucidoscope)を改良したのが
光透過装置です。
内部の明るさや色を見て物理処理の有無を推定できます。
孔口付近の様子や透過光の色調から濃厚着色処理(着色過度真珠)であることを疑えます。
また、透過の角度をいろいろ変えれば真珠層のひび、われや隙間などを確認できます。

 

(5)軟X線法による内部構造観察

(軟X線とは波長の長いX線のことで、動植物の内部構造を細かくとらえられます)
軟X線写真を撮る場合、大切なことは、方向を変えて幾つも撮ることです。
出来た写真はルーぺで観察します。
境界部の有機質層の有無で、物理処理が確認できます。
内部の核の存在やかたちで、有核か無核か、核のかたちが判ります。

 

(6)分光反射率測定

分光光度計で分光反射スベクトルをとり、クロチョウ吸収の有無で化学処理が判りますし、
濃厚着色処理(着色過度真珠)が推定できます。

 

(7)蛍光観察

蛍光分光光度計マベ真珠、黒蝶真珠を確認できます。

 

(8)微量元素分析装置による観察

微量元素分析装置(蛍光X線分析装置、X線マイクロアナライザーなど)を使うことにより、
化学処理海水産か淡水産かが確認できます。

 

(9)紫外線レーザー励起による発光スペクトル分析

窒素レーザー発光分析装置
(紫外線レーザー発光装置)
アコヤガイかシロチョウガイかの母貝を確認します。

観察する真珠の部分と機器

真珠のどの部分を、どういう機械をつかって観察するのかを述べてみます。

(1)真珠層表面部

光源を内蔵し、対物レンズを通して物体に光を照射する金属光学顕微鏡が使われます。
普通、百倍で観察しますが、四百倍まで拡大することがあります。
主として表面および、窪みや突起部周辺の結晶成長模様を観察します。
走査型電子顕微鏡で数千倍まで拡大することもありますが、特殊な場合です。

 

(2)真珠層表層部

金属光学顕微鏡の偏光装置で観察します。
真珠層内部の表面付近、表層部は、.真珠層の半透明性という性質から、その観察が可能です。
特に、この部位は、種々の着色処理の痕跡が観察される重要な場所です。

 

(3)真珠の内部

光透過装置が使われます。
ハロゲンランプ等の強力光源からの光を、グラスファイバー等を用いて、微小な一点に、冷光として集中させ、
そこに真珠を置いて、その拡散透過光から、真珠内部の概要を観察するのが光透過法です。
有機質層の分布状況、核の着色状況などが推定できますが、X線観察と違って、
内部からのそれらの情報が、色調の差となって表われるところに本法の特長があります。

 

(4)真珠の内部構造

真珠の内部構造、核、稜柱層、有機質層そして真珠属の存在や形態をつかむことは真珠鑑定の必 須事項です。
0.2〜O.6Åの波長をもつ軟X線による透視撮影は、現在技術的には高いレベルに達しており、
ほとんど完壁にその観察が可能となってきました。

 

(5)コンキオリン

コソキオリンからは、鑑定にとって重要な、さまざまの情報を得ることができます。
コソキオリソの構造はまだ解明されていないと述べましたが、真珠が養殖される種々の貝、
アコヤガイ、シロチョウガイ、クロチョウガイ、マベ、アワピなどすべて、
コンキォリンの成分に違いがあります。
したがって、反射型分光光度計、反射型蛍光分光光度計などの精密分析装置を使うことにより、
それぞれの特性をつかむことができます。
測定機器の発達はめざましいものがありますから、今後一層この分野でのあたらしい機器による新しい鑑定法が発見されてくると思います。
なお、鉱物性宝石でよく使われる、紫外線下の蛍光観察法も、真珠鑑定で大切な方法ですが、
これも蛍光というコンキォリンからの情報を観察する方法ですし、
黒真珠の鑑別に使われる赤外カラ一フイルム法も、フイルム上に、黒蝶真珠のコソキオリンの特長を反映させたものです。

 

(6)結晶板

主として蛍光X線装置やX線マイクロアナライザーなどの微量元素分析装置が使われます。
これは、貝によっては特有な元素を結晶板にとりこむ性質があるからです。
たとえば、海水産に比し、淡水産の貝殻には多量のMn(マンガン)が存在し、
逆に海水産にはSr(ストロンチウム)が多いことが見い出されています。

真珠の鑑別

(1)人造真珠の鑑別

ここでいう人造真珠とは、ガラス、プラスティック或いは貝殻でつくられた球体の表面に、
合成真珠箔を塗布したものをさします。
外観がひじょうに真珠に酷似しているのは、
その合成箔が真珠層と同じような光学現象を呈するようにつくられているからです。
しかし真珠層ではありませんから、その表面を拡大観察すればはっきりと判ります。
真珠の結晶成長模様に対し、人造真珠の表面は単調です。
小さな、あばたのような凹凸が散在している平坦な面で、拡大すると(×400)それらのあばたは、
箔の原料である炭酸鉛などの無機塩の正六角形の緒晶であることが判ります。

 

(2)有核真珠と無核真珠の鑑別

天然真珠、大多数の淡水産養殖真珠、一部の海水産養殖真珠には核がありません。
中心部に僅かに有機物質や空隙があゑ場合もありますし、ほとんどが全面にわたって、
真珠層からできている場合もあります。
これらの鑑別は、軟X線写真をとることにより明瞭に判ります。
有核の場合、核と真珠層の境界部には必らず、徴小な空隙や有機質層、稜柱層が存在しますから、
X線の透過状態の違いから核が丸く写ります。
ここでいう核とは、大半の真珠養殖に用いられる、淡水産貝殻製の球体をさします。

 

(3)物理処理真珠の鑑別

海水産の養殖真珠に放射線を照射しますと、中の核が黒褐色に変色します(これを物理処理と称 します)。
これは核に含まれるMn(マンガン)が酸化されて呈色するためといわれています。
核は淡水産の貝殻から作られますから、海水産に比しMn含有量が多いためです。
核が黒ずむと、真珠層の半透明性のため、真珠そのものか黒っぽく見え、養殖で出来るブルー系 真珠とそっくりになります。
この鑑別は、軟X線法と光透過法の両面から行なわれます。
軟X線法では、もっぱら有機質層の確認を行ないます。
養殖のブルー系真珠は、必ず境界部に有機質層がありますからその確認を行なうわけです。
有機質層がないのにブルー色をしていれぱ、この真珠は物理処理をしたのではないかと推定できるわけです。
光透過法では内部の色をみます。
核が黒い真珠は全体に暗く、橙色に、養殖のブルー系真珠は明るく、黄白色にみえます。
これは透過光が真珠内部で吸収される黒色物質の、量の違いによるものです。

 

(4)化学処理真珠の鑑別

真珠を銀塩(硝酸銀、塩化銀等)の溶液に浸漬しますと、溶液とコンキオリンの間に還元反応が おき銀が析出します。
真珠層中に微小な侵蝕孔を無数につくり、その中に銀が析出される結果、真珠は完全に黒色化します。
これを化学処理と称しますが、真珠層を黒色にする唯一の方法です。
一方、クロチョウガイから養殖される黒色真珠も、コンキォリン中に特有の黒褐色色素を有して いるため、真珠層は黒色です。
両者の外観はひじょうに酷似しています。
この鑑別法は、化学処理の痕跡を判別する方法と、黒蝶真珠のコンキオリンの特長を判別する方 法の2つの方法から成りたっています。

処理痕跡の判別法として先ず第1に、顕徴鏡の偏光装置で、真珠層表層部の侵蝕孔を見いだす方 法があります。
微小な侵蝕孔が、全面に或は部分的にスポットとなって現われます。
判別法の第2に、銀そのものの検出があります。
本来、真珠含有成分の中には銀はありませんから、微量元素分析装置を用いれば、処理による銀の存在が分析されます。
黒蝶真珠のコンキォリンの特長を見いだす方法としては、反射型分光光度計によるクロチョウ吸収の検出があります。
黒蝶真珠の分光反射スペクトルをとりますと、400、500、700 nm に特有の吸収スペクトルが認められます。
特にこの700 nm の吸収は強く、特長的なので、クロチョウ吸収と呼んでいます。
赤外カラーフイルムで黒蝶真珠を撮影しますと青色にうつります(化学処理真珠は黄色にうつります)。
これもクロチョウ吸収のためです。

 

(5)濃厚着色処理真珠の鑑別

一部の淡水真珠や或いは先述の物理処理によるブルー化の補強として、濃厚な染料溶液に真珠を浸 漬して着色する場合があります。
この鑑別法については余り研究されていませんので詳述できませんが、分光反射スペクトルをと ることにより、そこに、コンキォリンとは異なった染料特有のスベクトルが反映するのではないか と考えられます。

なお、一般にこの種の着色法では、真珠に穴をあけて、その穴口から真珠内部に染料を浸透させ る方法をとります。
そこで穴口付近を光透過法で観察するとか、あるいは表層部や窪みに残存付着 している染料を顕徴鏡の偏光装置で観察するなどの方法はよく行なわれます。

 

(6)その他の鑑別法

そうひんぱんにあるわけではありませんが、真珠を取扱う場合知っておいてよい事例を若干以下 に述べます。

(i)核のかたちの確認

養殖真珠であることは間違いないが、その真珠のかたちからして、どのような核が入っているの かといった問題にぷつかることがあります。
例えぱ複雑なかたちをしたバロツク珠とか、マベやシロチョウガイで、最近養殖が行なわれている養殖スリ一クォター真珠などです。これらについては、軟X線法が最適です。

(ii)真珠層のわれの確認

“南洋珠"のように、サイズも大きく、真珠層も厚い場合、いろいろなひずみで、真珠層内部にわれ が入ることがあります。
商品価値が激減したこれらの真珠を、シリコンオイル等に浸漬して、われを一時的に隠ぺいすることがあります。
これの確認は、光透過法や軟X線法で可能です。

(iii)表面コーティングの確認

真珠の表面を樹脂や塗料でコーティングし、その見かけの光沢を増大させる方法があります。
真珠業界ではこの方法は禁止事項になっていますが、まれに市場にでまわる場合があります。
うすい酸を綿棒につけ、表面の一部を軽くエッチングし、顕徴鏡で観察します。
コーティングされたものは、結晶板の粒子が見いだされません。


 

(7)母貝鑑別法

いかなる貝が作った真珠であるかを、真珠そのものから判別するのが母貝鑑別法です。
中心は真珠層の結晶板やコンキオリンに内在する、それぞれの母貝の固有の特長を、
精密分析装置を使って判別します。
まず、淡水産か海水産かはMnの含有量で判別します。(淡水産真珠はMnの含有量が多い)
クロチョウガイはクロチョウ吸収(700nm)、
マベ特有の615nmの蛍光スペクトル、
アコヤガイとシロチョウガイは紫外線レーザー光下での固有発光スペクトルで判別します。
(発光ピークはアコヤガイ(485nm)とシロチョウガイ(420nm)です)
アワビは巻き貝ですので結晶成長模様がなくピラミッド状に結晶するので、
その独特の結晶構造を(電子)顕微鏡で判別します。

真珠鑑定用機器


真珠鑑定用の機器は日進月歩の世界です。
此処に挙げてある機器も既に古くなっていたり、
より新しい効果的な機器に置き換えられているかも知れません。


機械の名称 検査項目
真珠の外見
  (真珠層表面部)、(真珠層表層部)を含む
金属光学顕微鏡
金属光学顕微鏡偏光装置
結晶成長模様を確認
化学処理や濃厚着色処理
電子顕微鏡 アワビ真珠の結晶成長模様の確認など例外的な使用
万能投影器 形状
硬度計 硬度
真珠の内部
 
光透過装置 内部の概要をつかむ、
物理処理の有無、濃厚着色処理、真珠層のわれなど
軟X線装置 内部構造を微細にとらえる、
境界部での有機質層の有無、内部の核の存在やかたち
分光光度計
自記分光光度計
黒真珠等の鑑別
真珠の色
微量元素分析装置
 蛍光X線分析装置
 X線マイクロアナライザー
資料表面に存在する元素を分析し鑑別に役立てる
物質にX線を照射すると物質を構成する元素から
特有の2次X線が発生します
この2次X線(蛍光X線)を調べることによって
物質を構成する元素の種類と量を知ることができます
蛍光分光光度計 マベ真珠等の鑑別
紫外線レーザー発光装置  
紫外線応用物質鑑識器 真珠の加工度
フェードテスター 褪色度
蛍光度測定装置 加工度
超軟X線 被層状態
グロスメーター 光沢
分光測色計 真珠の色
赤外カラーフィルム 着色と養殖の黒真珠の検査など


 

 

 

鑑定書の記載事項

┌──────────────────────────────────────────────┐
│REPORT ON PEARL IDENTITY(Certificate of Gem Identification) NO.(Report No.)                 │
│真珠鑑定書 番号                                                                             │
│                                                                                            │
│DATE ISSUED ISSUEING AGENT                                                                  │
│発行年月日 発行者                                                                           │
│                                                                                            │
│DISTINGUISH PERSON                                                                          │
│鑑別人氏名                                                                                  │
├────────────────────┬─────────────────────────┘
│PHOTO                                   │ APPLICANT
│写真                                    │ 申請者
│                                        │
│PEARL GROWth PATTERN                    │ CULTIVATOR
│真珠成長模様                            │ 養殖業者
│                                        │
│(CONCLUSION)                            │ CULTIVATED PLACE
│鑑定結果                                │ 養殖場所
│                                        │
│MOthER OYSTER                           │ CULTIVATED YEAR
│母貝の名称                              │ 養殖年
│                                        ├─────────────────────────┐
│APPEARANCE(VISIBLE CHARACTER)           │ @INTERFERENCE COLOR                             │
│外観、特徴                              │  赤味(干渉色)                                 │
│                                        │                                                  │
│SETTING                                 │ ANACREOUS LAYER'S COLOR                         │
│枠                                      │  黄色味(真珠層の色)                           │
│                                        │                                                  │
│SHAPE OR STYLE                          │ BORGANIC SUBSTANCE AND/OR CALCITE LAYER'S COLOR │
│形状                                    │  黒味(有機質層、稜柱層の介在)                 │
│                                        │                                                  │
│MEASUREMENT(SIZE)                       │ CLUSTER                                         │
│サイズ                                  │  内面光沢(てり)                               │
│                                        │                                                  │
│WEIGHT                                  │ DDIM                                            │
│重量                                    │  表面光沢(ぼけ)                               │
│                                        │                                                  │
│HARDNESS                                │ ENACREOUS COATING                               │
│硬度                                    │  真珠層の厚さ(まき)                           │
│                                        │                                                  │
│SPECIFIC GRAVITY                        │ FAPPEARANCE OF thE NACREOUS COATING             │
│比重                                    │  見かけの巻き                                   │
│                                        │                                                  │
│REFRACTIVE INDEX                        │ GBLEMISH                                        │
│屈折率                                  │  内部のきず(きず)                             │
│                                        │                                                  │
│POLARISCOPE TEST(POLARIZED CHARACTER)   │ HSURFACE CONDITIONS(MAGNIFICATION TEST)         │
│偏光性                                  │  表面の状況                                     │
│                                        │                                                  │
│FLUORESCENCE                            │ IROUNDNESS                                      │
│蛍光性                                  │  真円度(かたち)                               │
│                                        ├─────────────────────────┘
│ABSORPTION SPECtrUM                     │ PROCESSOR
│分光特性                                │ 加工業者
│                                        ├─────────────────────────┐
│PHENOMENA                               │ JPROCESSING(BLEACHING、COLOR ARRANGEMENT)       │
│特殊効果                                │ 加工(漂白、調色)                               │
│                                        │                                                  │
│ADDITIONAL TEST                         │ KPROCESSING(POLISH、COATING)                    │
│その他の検査                            │  加工(研磨、コーティング)                     │
│                                        │                                                  │
│REMARKS                                 │ LMATCHING OR BLENDING                           │
│摘要                                    │  連相                                           │
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