(番外編)
 

隕石の話

 
隕石とは | 隕石の年齢 | 隕石と流れ星 | 隕石の分類 | 南極隕石 | 火星隕石 | 月隕石 | 隕石の命名 | 隕石ハンター | 大量絶滅

隕石の分類(詳細) | (表)「隕石の分類」

 

 
Jewelry
鉄隕石を使用した
ブレスレットの一部
 
「隕石という言葉は知っているが細かいことは分からないし興味もない」、「流れ星が燃え尽きずに地球に落下した燃えカスではないか」あるいは「鉄の塊みたいなものでは」といったのが一般的な隕石に対する認識でしょう。
しかし、隕石を馬鹿にしてはいけません。 実は隕石は大したものなのです。

隕石が地球の外からやってきたという事実は何ものにも替えがたい貴重なことなのです。
地球の外にはいったいどんな事柄があるのか、分からないことがいっぱいです。 
隕石を調べれば地球の周りの天体のことが分かるだけではありません。
比較検討することにより、地球自体や地球の内部の推測もできますし、地球が遭遇した生物の大量絶滅の危機の幾つかについても知ることができるのです。

私は隕石にかかわる幾つかの事柄を述べて参考に供したいと思います。

 
 

隕石とは

宇宙空間から地球上に落下した大きさ1ミリより大きな固体物質を隕石といいます。
同じ、宇宙からの落下固体でも、1ミリより小さいと宇宙塵と呼んで区別します。
隕石は地球大気圏突入時に表面が溶融するため、黒色ガラス光沢の溶融皮殻で覆われているのが特徴です。

 
 

隕石の年齢

隕石の多くは、その形成年代が共通して約46億年と古いことが特徴としてあげられます。
隕石の年齢が45.5億年であるという報告を最初にしたのはシカゴ大学のPattersonです。
1956年のことでした。 Patterson は隕石の鉛同位体比を測定し、
隕石の年齢が 4.55 ± 0.07 × 109 年という値が得られたことを明らかにしました。

月の最も古い石も45億年を越す年代を示します。
地球の年齢もやはり45.5億年なのです。
皆大変よく似た年代を示しています。
これから分かることは、少なくとも太陽系の惑星ができたのは45億年を越したあたりであるということです。
地球の材料となった物質は隕石の材料になった物質や月の材料になった物質と共通の物質であると考えられます。 
そして太陽系の初期には確かに存在した短い半減期の放射性核種が隕石にも地球にも存在していた痕跡があります。
この痕跡の存在は逆に言えば、隕石が出来たのと地球が出来たのが材料的にはほぼ同時であった証拠と言えます。

45.5億年前の石は、地球の岩石からは見つかりません。
したがって、隕石は地球上の物質から得られる年代値として最古ということになります。
また、始原的隕石とされるコンドライト(球粒隕石)の元素存在度は、水素やヘリウムといった岩石や金属にあまり取り込まれない揮発性元素を除けば、太陽大気の元素存在度と類似していることが知られています。
このことは、コンドライトが太陽系の形成時にできた物質で、その後大きな変化を受けていないからであると考えられます。

 

隕石 meteorite と
流れ星(流星) meteor
との関係

あなたは夜空にスーと光って消える「流れ星」について、宇宙からの岩石の小さなものは地球の大気中で燃え尽きてしまい、大きなものが地上に到達して隕石と呼ばれると思っていませんか? 実はそれが少し違うようなのです。

実際に
  1. 「流れ星」が沢山現れる流星雨の時に隕石が多く降った例がないのです

  2. 流星物質の密度が平均 0.3g / 立方センチなのに対して
    「隕石」の密度は平均 3.5g / 立方センチでその差がありすぎるのです
という疑問が生じたのです。

そして、1970年アメリカオクラホマ州に落下したロストシティ隕石 Lostcity(H5)、1977年カナダアルバータ州に落下したイニスフリー隕石 Innisfree(LL5) などの落下をカメラで捕らえ、その軌道を算出したところ、火星と木星の軌道の間にある小惑星帯 asteroid belt からきたものと考えて間違いないだろうということになりました。
地球の軌道と交差する軌道を持つ小惑星 asteroid が、地球に衝突し、大気との摩擦でも消滅せずに(燃え尽きずに)、地表に落下するのです。
今では赤外線分光スペクトルでこの小惑星帯の観測をし、隕石と小惑星は似た構成を持っていることも確かめられています。

他方、「流れ星」は宇宙空間から地球に飛び込んでくる細かい「氷や塵」であるとされています。
その大きさは小さいものは1ミリ、大きなものでも数センチという小さなものなのです。
「流れ星」はこの「ちり」自体が燃えるための光ではなく、むしろ超高速で大気に突入するときに大気中の酸素や窒素の分子や原子にぶつかって弾き飛ばし、これがまた他の分子や原子にぶつかり加熱して発光すると考えられています。
発光しているのは、衝撃によってプラズマ化されたガスであると考えられています。
国立天文台がすばる望遠鏡で撮影した画像の分析から酸素原子が追突されたときに出す特殊な光ををもとに計算したところ、発光しているのは直径わずか数ミリの範囲であったということです。
「流れ星」は主に氷や塵などでできており、光を放つのは地上100-120kmであるとされています。
例えば、2001年11月の「しし座流星群」の場合、33年毎に太陽に近づくテンペル・タットル彗星 Comet Tempel-Tuttle が通過した軌道に沿ってチューブ状に残されたガスや「ちり」が原因であると考えられています。
(下図は隕石の軌道を表した模式図です)
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その結果、現在ではおおよそ
という考えが一般的になりました。

(注)2006年6月13日までに軌道が確定し登録番号が与えられた小惑星は129436番まであります。
その他に軌道が未確定な小惑星が数十万個あるとされています。

小惑星で比較的大きなものは
 セレス Ceres 直径 952km
 パラス Pallas 直径 520km
 ベスタ Vesta 直径 516km
などがありますが、このうち、
セレスは冥王星と同じ準惑星 dwarf planet に格上げされました。

これから十数個の小惑星が同様に準惑星に格上げされるということです。(理科年表による)


私が学生時代に習った銀河系惑星の並び方「水金地火木土天海冥」も時代とともに変わったのです。
2006年8月に開かれた国際天文学連合 (IAU) 総会で冥王星が惑星からはずされました。
冥王星は準惑星 dwarf planet になったのです。
替わりに太陽系外縁天体「カイパー・ベルト (EKBO Edgeworth-Kuiper Belt Objects)」の存在が指摘されるようになるでしょう。
「カイパー・ベルト」は狭義には軌道長半径が約30 AU〜約48 AUの天体を指します
「カイパー・ベルト」には準惑星の冥王星 Pluto、マケマケ Makemake、ハウメア Haumea、などが含まれます。
準惑星のエリス Eris は広義の「カイパー・ベルト」に含める場合と
「カイパー・ベルト」の外側の「散乱円盤天体 (SDO Scattered Disc Objects) 軌道長半径が約48 AU〜約400 AUで、離心率が大きい天体」に分類する場合があるようです。

私は小惑星帯 asteroid belt については、中学校でも高等学校でも何も知らずに過ごしました。
今後は隕石の重要性や地球に大量絶滅を引き起こす巨大隕石のやってくる可能性のある
小惑星帯 asteroid belt について、学校で惑星と同じかそれ以上に詳しく教えることが必要です。

小惑星探査機「はやぶさ」MUSES-C で有名になったイトカワは過去には小惑星帯の内縁部に存在し、
火星か木星の重力による影響を受けて現在の軌道に移ったものと考えられています。


 
 

隕石の分類

 
隕石は「始原的隕石」と「分化した隕石」とに大きく2種類に分けることができます。

始原的隕石 Primitive Meteorites」は全体が融けた形跡のない、46億年前に太陽系ができた頃の物質をそのまま集めたものと考えられます。 
分化した隕石 Differentiated Meteorites」は一度全体が融け、化学的な分別を受けた隕石です。 このうち多くは、太陽系ができてからすぐ(1000万年以内)に融けたと考えられています。

固体惑星に似た組成の小天体のうち、概ね直径100km以上のものは内部が融解し得ると考えられています。 
小天体の内部で融解が生じれば、重力によって成分分離が起こり、密度の大きい金属が中心に集まって核となり、これをより密度の小さい岩石質の物質が包んでマントルとなります。
このような小天体が、相互衝突などによる何らかの外力を受けて破壊されたものが、宇宙を彷徨し、一部が隕石として地球に落下してくると考えられます。 

大まかに分けると三つに分けられます。
  1. 小天体の中心核が破壊され、隕石として地表に落下してくるのが鉄隕石(隕鉄)で、


  2. 小天体の中心核とマントルは明瞭な境界があるのではなく、境界領域では金属鉄と岩石が混在します。
    これが石鉄隕石の起源物質であると考えられています。 


  3. 小天体のマントル部が破壊され、隕石として地表に落下してくるのが石質隕石です。
石質隕石はさらに
に分類できます。

コンドリュール(球粒)は主として珪酸塩からなる2mm以下の球粒物質です。 
これは地球の物質にはないもので、太陽系形成時の情報をもつものと考えられています。 
その形態や内部構造から、原始太陽系星雲の自由空間の中で固体前駆物質がなんらかのプロセスで加熱されて溶融し、それが急冷されたものと考えられています。 (前記の小天体の内部が融解したものとはまったく異なった形状のものです。)
そこで、このコンドリュール(球粒) chondrule を含むコンドライト chondrite は「始原的隕石 primitive meteorite と呼ばれます。

隕石の分類の詳細については別紙「隕石の分類(詳細)」及び(表)「隕石の分類」を参考にしてください。

これらには隕石以外に隕石の落下時に地球上の岩石(主としてシリカ)が熱や圧力などを受けて生じた衝撃物 impactite(主として天然ガラス)についても付録として載せてあります。
これには隕石の落下した隕石孔(クレーター)とその周辺でとれるもの(クレーター・ガラス crater glass )と、一旦跳ね飛ばされるなどして大気圏内外に浮遊して落下したもの(テクタイト tektite )とがあります。
これらの分類区分は未だ明確なものではありません。

 
 

南極隕石の話

 
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南極隕石は南極横断山脈に近い氷原で多数発見されています。

南極隕石の産地
1969年に、世界で最初に日本の南極観測隊が昭和基地南西約300 kmの南極内陸のやまと山脈付近を調査中に、氷の上の狭い範囲に9つの異なる種類の隕石を発見しました。  これが契機となり、南極のある限られた地域に隕石が濃集して産出することがわかり、大量採集へとつながりました。
南極では多くの隕石が効率よく採集できることから「南極隕石」と呼んで区別することがあります。

右の図は南極隕石の産地です
(「南極隕石センター」より)

昭和基地から一番近い隕石フィールドは、やまと山脈の周辺にあります。
この地域で採集される隕石をやまと隕石といいますが、多く見つかることから採集年度の西暦下2桁と数字を組み合わせて、たとえばYamato 980459などと命名します。
南極横断山脈に沿って多くのフィールドが存在します。

南極で隕石が大量に採集できる理由
隕石がなぜ狭い地域にまとまって発見されるかは、
第一に周りが氷原で隕石以外に岩石がなく、見つけやすいことです。
第二に南極大陸の氷が大陸氷河となって流れて行くのを南極横断山脈が遮るので、氷は山脈に沿って上昇することになります。
この氷原で、氷は昇華し氷と共に流れてきた隕石が取り残されることになるのです。
下図は南極隕石の集積の模式図です(「南極隕石センター」より)

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実際の採集方法
米国はヘリコプターを飛ばし、隕石を見つけると目印を落とし、後から回収します。
それに比べ、日本の方法は地道な方法です。
やまと山脈へ行く場合、昭和基地から大型雪上車で行くのがこれまでの方法です(写真)。

大型雪上車は7橇まで牽引できます。
橇に積載するのはその大半が雪上車の燃料です。
その他、探査に用いるスノーモービルやその燃料、食料、雪上車の予備部品、装備関連、の荷物を橇に積みます。
やまと山脈へ着けば、ベースキャンプを設定して、橇を切り離して、スノーモービルを橇から降ろし、隕石探査を開始します。
誘導には1台の大型雪上車を用い、その片側にスノーモービルがゆっくりと並走します。

世界一の隕石保有国、日本
これまでに日本南極地域観測隊で採集された南極隕石は、すべて日本の南極隕石センターで保管されています。
また、1976年から3カ年にわたり行われた日米合同探査で採集された南極隕石も、それぞれ日米で折半し、保管しています。
これらを合計すると日本の南極隕石センターが保管する南極隕石は、16700個あまりとなります。 
この結果、日本は世界最大の隕石保有国となりました。

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注目すべきは中国の進出です。
日本隊は隕石採集中のある事故以来、隕石の採集に熱心でなくなったように見えます。
日本はここでも世界で優位にあった状況をなくしつつあるようなのです。
折角、優位にあるのですから、南極隕石を独占する勢いが欲しいと思います。



 
 

火星隕石の話

 
火星隕石は火星に大きな隕石が衝突し、火星の岩石が宇宙空間に飛び出して地球に到達したと考えられています。
現在、火星の地質や進化過程を教えてくれる唯一の物質です。

SNC隕石
火星起源と考えられている隕石群をSNC隕石と呼んでいます。
これらは火星に隕石衝突があった際に火星を離脱し、後に地球に落下したと考えられています。

1815年フランスのシャシニー村 Chassigny, Haute-Marne, France に落下した隕石(ダナイト(カンラン石+輝石))は土地の名前からシャシニー隕石 Chassignite と名付けられました。
次に1865年インドのシャーガーティ町 Shergotty (Shergahti) in Bihar state に落下した隕石(玄武岩)はシャーゴッティー隕石 Shergottite と名付けられました。
最後に1911年エジプトのナクラ El Nakhla, Egypt に落下した隕石(カンラン石)はナクラ隕石 Nakhlite と名付けられました。

1970年頃 その後に見つかった隕石も含めこれらは成分分析から同じ天体を起源とする可能性が指摘されました。
3つの隕石の頭文字を取ってSNC隕石と呼ばれる分類グループが生まれました。
SNC隕石は現在までに30個見つかっています。

SNC隕石は次のような特徴を持っています。(Carr, 1996)
全部で 10 個を分析したが、そのうち 9 個が火山岩でした。
放射性元素による年代測定は 1.5〜13億年に形成されたことを示します。 (ALH84001 は 45億年)
結晶の堆積組織が見られます。
メルト内の結晶分化で作られたと想像されます。
衝撃波の影響があまりありません。
よって衝突中心から離れた所にあったと考えられます。
結晶のサイズがあまり大きくなく、親メルトは地殻の浅い所にあったか、または地表に押し出されたようなものであったと想像されます。

要約すれば、いずれもマグマが固結してできた火成岩でその形成年代が若いということです。
多くの隕石が太陽系のできた40億年以上前の形成年代を持つのに対してSNC隕石は1.5〜13億年という新しさを持っています。
つまり最近まで火成活動をしていた天体からもたらされた物であることになります。
そのような天体は火星か金星、あるいは木星の衛星くらいしか考えられません。
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SNC隕石に分類される
火星隕石 EET79001
さらにSNC隕石にはマグマに水を含む環境であったこと、磁鉄鉱など酸化された鉱物が含まれていることから大気のある環境であったこと、さらに重力のある環境でできたことを示唆する鉱物組織があることがわかってきました。
このような条件を満たす母天体として火星は有力な候補でしたが、1980年頃までは10個に満たない隕石数ではっきりしたことはわかりませんでした。
1979年南極で発見されたEET79001隕石はシャーゴッタイトでSNC隕石に分類されますが、鉱物の中に閉じこめられていた希ガス成分を分析しところ、1976年に火星に軟着陸したバイキング探査機の火星大気成分分析と完全に一致したのです。
これによってSNC隕石が火星起源であることが明らかになりました。

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SNC隕石に分類されない
火星隕石 ALH84001
SNC隕石に分類されない火星隕石が1個だけ見つかっています。
ALH84001とよばれるこの隕石こそ火星生命騒ぎになった隕石なのです。
この隕石だけは45億年という火星形成初期の岩石であることが明らかになりました。
南極の氷の下にはこのような火星隕石が埋もれています。
氷河に流され地表へ浮き出てくるようですから今後このような隕石が見つかる可能性は十分にあります。


南極で発見された火星隕石
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南極で発見された
火星隕石 ALH-77005
 ALH-77005 極地研
NASA
 1977発見 480g
 ALH-84001 NASA 1984発見 1.9kg
 EETA79001 NASA 1980発見 7.9kg
 LEW88516  NASA 1994発見 13g
 QUE94201 NASA 1977発見 12g
 Yamato-793605 極地研 1977発見 16g

 
 

月隕石の話

 
これまでに南極から14個の月起源隕石が発見されており、そのうち7個が日本隊による発見です。
南極以外ではオーストラリアで1個、サハラ砂漠で2個が発見されています。
SNC隕石を火星起源とする説に対して反論として出されたのが、「火星から隕石がやってくるのなら、月から来てもいいではないか。」というものでした。
そして、月隕石も南極で発見されたのです。

月の岩石は、旧ソ連のルナー計画によって持ち帰られた 300g、アメリカのアポロ計画による 400kg がありますが、南極から得られた月隕石は総量で 2kg におよんでいます。
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月隕石 Yamato-82193
重要なことは、アポロ計画などによる採取が限られた地域であるのに対し、月隕石はそれぞれが月の異なった場所から飛び出し、地球に飛来していることです。
地球上にいながらに、月の各地域の岩石が得られるわけで、驚くことに月の裏側から来た可能性が高い隕石も含まれているのです。
月から持ち帰られた岩石は全て地球に見える側からであり、その岩石が月の地殻を代表すると考えられてきましたが、月隕石の発見によりそれが修正されています。
月隕石の発見は、これまでの考え方とは異なった、新しい月の進化の姿をみせてくれることでしょう。


南極で発見された月隕石
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南極で発見された
月隕石 Asuka-881757
 Yamato-791197 極地研 1979発見 52g
 Yamato-793169 極地研 1979発見 6g
 Yamato-793274 極地研 1979発見 9g
 ALHA81005 NASA 1981発見 31g
 Yamato-82192 極地研 1982発見 37g
 Yamato-82193 極地研 1982発見 27g
 Yamato-86032 極地研 1986発見 648g
 EET87521 NASA 1987発見 31g
 Asuka-881757 極地研 1988発見 442g
 MAC88104 NASA 1988発見 61g
 MAC88105 NASA 1988発見 662g
 QUE93069 NASA 1993発見 21g
 QUE94260 NASA 1994発見 3g
 QUE94281 NASA 1994発見 23g
 
 

隕石の命名

 
慣行として、落下地点における配達を受け持つ(郵便区とする)集配郵便局の名がつけられます。
隕石が落下中に分解した場合、最も質量の大きい破片が落下した地点を郵便区とする郵便局の名がつけられます。
郵便局の名にすることにしたのは、発見者の名をつけることにした場合、誰が発見者かが争われる場合があるためです。
隕石はどこに落ちるか分からず、例えば砂漠の只中に落ちた場合、その地域を管轄する警察署や消防署は存在しない場合があります。
しかし、その地域を郵便区とする郵便局だけは、どこの国でも必ず存在します。
このため、配達受け持ち郵便局の名を隕石の名とすることが世界的な慣行になっています。
同一郵便区内に2個以上の異なる由来の隕石が落下した場合、(a)、(b)、(c)とアルファベットの符号をつけて区別します。

南極の隕石の場合

南極で発見された隕石は、総称して南極隕石と呼ばれます。
このうち、日本の南極地域観測隊がやまと山脈で発見した隕石は、総称してやまと隕石(Yamato meteorites)と呼ばれます。
当初は命名規則どおり、(a)、(b)、(c)などの符号をつけて識別していましたが、数が膨大になったため、現在は「やまと75105」などと番号で呼ばれます。
5桁の数字の上2桁は発見年を示し、残りの3桁はその年に発見された隕石の通し番号を示しています。
この隕石「やまと75105」はやまと山脈で 1975年に発見された105番目の隕石であることを意味しています。
この命名は、正式な命名規則が決定するまで、暫定的に国際的に認められることになっています。

 
 

隕石ハンターの話

 
宇宙から地球へ降り注いだ隕石。
今その隕石がアメリカで大きなブームを呼んできます。
珍しい隕石の収集に熱を上げる億万長者達、そんなコレクター達を満足させるために世界中を駆け巡る人たちがいます。
それが隕石ハンターです。 貴重な石を手に入れるために危険と隣り合わせのビジネスを続けています。

隕石の値段
計算すると重さ10キロの隕石だと鉄隕石で400万円となります。
また、大きさ、希少性、断面図の美しさで決まります。
金(ゴールド)が1グラムあたり2000年時点で1400円(2008年時点では3000円程度に高騰中)なので、その価値の高さが分かると思います。
  1. アメリカ・アリゾナ州のロバート・ヘイグ氏がナイジェリアで入手した 3kg の火星からの隕石は、
    その貴重性から1億1000万円もの高値で売却されました。

  2. アメリカ・アリゾナ州在住のマービン・キルゴア氏は、アフリカ・西サハラで総重量 630g の隕石を発見。
    何とこの隕石は月からのもので、アポロ計画でも人類が踏み入れたことのない場所から飛来してきたものと判明しました。
    そのため、1g110万円という値段がついたのです。
    この月からの隕石が 630g 全て売れたとすれば、なんと推定7億円になります。


 
 

大量絶滅

 
大量絶滅とは、ある時期に多種類の生物が同時に絶滅することで、地質時代において幾度か見られます。
多細胞生物が現れたベント紀以降、6度の大量絶滅があったとされます。
原生代末の大量絶滅は最近の研究で大量絶滅があったことが判明しつつあるものですので、5度という捉え方もあります。

(7)(現在進行中)
 

 
完新世の大量絶滅
Holocene extinction event
(6)約6550万年前
 

 
白亜紀末の大量絶滅 (K-T境界)
Cretaceous-Tertiary extinction event (K-T extinction)
(5)約2億0500万年前
 

 
三畳紀末の大量絶滅
Triassic-Jurassic extinction event
(4)約2億5140万年前
 

 
ペルム紀末の大量絶滅 (P-T境界)
Permian-Triassic extinction event
(3)約3億5500万年前
 

 
デヴォン紀後期の大量絶滅
Late Devonian extinction
(2)約4億4370万年前
 

 
オルドヴィス紀末の大量絶滅
Ordovician-Silurian extinction event
(1)約5億4200万年前
 

 
原生代末(エディアカラン紀末)の大量絶滅
End-Ediacaran extinction


現在、急激な地球温暖化を原因とする第7番目の大量絶滅が進行中であるという意見
(生物学者の70%程度、1998年のアメリカ自然史博物館による調査による)が有力です。
名付けて「完新世の大量絶滅」Holocene extinction eventと呼んでいます。
大量絶滅そのものについては別に項を改めたいと思います。
ここでは隕石が有力な原因とされる K-T 境界について若干述べてみます。

Jewelry
チクシュルーブ Chicxulub Crater の位置
巨大隕石落下

約6500万年前の白亜紀末、すなはち K-T 境界 Cretaceous(Kreidezeit)-Tertiary boundary に、直径約 10km の巨大隕石がメキシコのユカタン半島付近に落下したことが分かっています。
落下により直径100km以上、深さ15〜25km のチクシュルーブ・クレーター Chicxulub Crater が形成されたことが確認されています。
恐竜は絶滅してしまいました。
アンモナイトが完全に絶滅したのもこの時期です。
この巨大隕石が地球に衝突、発生した火災と衝突時に巻き上げられた塵埃が太陽の光を遮ることで、全地球規模の気温低下を引き起こし、大量絶滅につながったと考えられています。

右の地図はチクシュルーブの位置を示しています。
1980年、アメリカの物理学者、ルイス・アルバレス Luis W. Alvarez 1911-1988 と
息子の地質学者ウォルター・アルバレス Walter Alvarez 1940- らは、
Science 誌に 「地球圏外を原因とする白亜・第三紀境界大絶滅」と題する論文を発表しました。
その中で述べた巨大隕石落下により白亜紀末の大量絶滅が起こったという説は当時はかなり大胆な仮説であったのです。

当初、アルバレスらはK−T境界の粘土層がどのくらいの期間で堆積したのか調べるために、
イリジウム Iridium を含む宇宙塵が地球に均一に降り注いでいるという前提で、イリジウム Iridium 濃度を得ようとしました。
ところが予想に反して、イリジウム濃度が極端に高かった(最高40ppb)のです。
そこで、他の地点のK−T境界のサンプルで調査しましたが、総てのサンプルに高濃度のイリジウムがみられたのです。
これらを説明し、大量のイリジウムを供給するには巨大隕石の衝突という仮説によるほかないという結論に達したのでした。

ヴィクトール・モーリッツ・ゴルトシュミット Victor Moritz Goldschmidt 1888-1947 の「元素のゴルトシュミット分類」によれば、
イリジウムは親鉄元素 Siderophile element (鉄と結びつきやすい元素)であるとされています。
イリジウムは地表部には極端に少ない(0.000003 ppm)元素ですが、隕石には比較的多く含まれています(地表部の10000倍以上)。
地球の生成時の材料物質の中のイリジウムは溶融金属鉄とともに大部分が地球の中心部分に落下していったために、
宇宙塵や隕石など他の太陽系を作っている材料物質と比べるとイリジウム Iridium 濃度が地殻部分では非常に低いのだと考えられています。
Jewelry
グビオ Gubbio in Italy の近く
K-T 境界の地層
その後、1981年チクシュルーブ・クレーター Chicxulub Crater が発見されたのですが、
このクレータがアルバレスらの仮説のクレータだとは誰も気が付かなかったのです。
1992年から1993年頃このクレータの出来た年代が分かってきて、
K-T境界に存在するジルコンの年代がチクシュルーブ・クレーターに含まれるジルコンと年代が一致することがわかったのです。
この後もこの仮説の正しさが次々と証明され、現在では白亜紀末の大量絶滅 (K-T境界)は巨大隕石落下によることが通説となっています。
右の写真はイタリアのグビオ Gubbio in Italy の近くで露出している K-T 境界の地層です。
地球全体に大量の塵埃が降り積もったことが分かります。
隕石の衝突によって形成されたと考えられるクレーターが、地球には150カ所以上、確認されています。
カナダのサドバリー・クレーター Sudbury Basin (Ontario, Canada) と、南アフリカのヴィレデフォルト・クレーター Vredefort crater (South Africa) の直径はそれぞれ 250km、300kmもあり、人工衛星からの写真でなければ、全体を眺めることができません。
このように大きなクレーターが存在することは過去において巨大な隕石が地球に何度も衝突していることを示しています。

Manicouagan crater
マニクアガン・クレーター
Manicouagan crater
「三畳紀の巨大隕石衝突 岐阜の地層に証拠」(日本経済新聞 2012.11.06)が掲載されました。
マニクアガン・クレーター(Manicouagan crater)はカナダ・ケベック州コート・ノール地域にある直径約100kmのクレーターです。
セイント・マーティン・クレーター、ロシュショール・クレーター、オボロン・クレーター、レッド・ウイング・クレーターと合わせて、2億1400万年前に破砕した天体の衝突によって生じた連鎖クレーターであると推定されています。

これはカナダのマニクアガン・クレーター(Manicouagan crater)が巨大隕石衝突によってできたクレーターであることの 証明になるとされています。
なお、この巨大隕石の衝突は地球の生態系に大きな影響を与えたと思われますが、三畳紀末の1000-1400万年程度の前にあたることから、すぐには三畳紀末の大量絶滅 (Triassic-Jurassic extinction event)に繋がるものではないと考えられます。



巨大隕石の落下に対策はあるのでしょうか
第一に隕石の衝突を察知しなければなりません。
衝突のどれだけ前に発見できるのかが重要なポイントになります。
時間的な余裕がなければ、次の対策も実施できません。
第二に衝突を回避させるための手段の開発、準備です。
現在、衝突を回避させる具体的な方法は見つかっていません。
例えば、
  1. ロケットで原水爆を打ち込み、破壊するといった方法です。
      現在はまだ準備されていませんし、
      仮にそれが可能になったとしても、効果の程は疑問視されています。
      (破壊された岩石が大量に地球に降り注ぎ、むしろ被害は拡大するのでは)


  2. 宇宙船を小天体にドッキングさせ、ロケットで徐々に軌道を変えさせる方法
      (こちらの方がより望ましいとされています)
なども考えられます。
人類の英知を傾けて有効な対策を考えて、準備しておく必要があります。
まずは、小惑星帯の中の小天体の動きを監視する国際的な連携から始めるべきでしょう。



 
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