本分野は宝石の中で一番技術の進歩が激しいところなので、本稿はあくまで基本資料とし、
最新の情報を得るようにしてください。
 

合成宝石
Synthetic Stones


合成石 (Synthetic Stones)と人造石(人工石) (Artificial Products)

 

合成方法

ベルヌーイ法(Verneuil Growth)フラックス法(Flux Growth)熱水合成法(Hydrothermal Growth)引上げ法(Czochralski Growth)

 

合成宝石

ダイアモンドルビースター・ルビーサファイアアレクサンドライトエメラルドアメシスト(紫水晶)オパール(蛋白石)

 

本当の合成宝石が作れていないもの

トルコ石さんごヒスイ

 

合成石の諸元
 

 
色々な合成宝石のブール Boule とそれをカットした宝石
(ブール Boule とはベルヌイ Verneuil 法などによって人工的に作られた円筒状の宝石の原石をいいます)
 
Jewelry
 
 
宝石を人工によって作りだそうという試みは昔から連綿と続けられて来ましたが、それが現実のものとなったのは今世紀になってからです。 1904年にフランスの科学者ベルヌイ Verneuil によって合成ルビーの製造法が発明されたことに始まります。
 
合成石
Synthetic Stones と
人造石(人工石)
Artificial Products
 

合成石 (Synthetic Stones)
 一つは、天然宝石と同じ化学組成と結晶構造をもった石で、色、光沢、硬度、密度、光の屈折率 などの性質も天然石と同じものです。合成するときに、不純物の種類や量を適当に配合したり、結 晶の成長条件を自由に変えたりすることによって、天然石よりも色か鮮やかで、透明度も高いもの をつくることができます。また、量産ができますので、ダイアモンドを除けば、一般に値段は非常 に安くなります。天然に産出する宝石のほとんどすべてが人工的に合成されて、宝飾用および工業 用に広く用いられています。
人造石 (Artificial Products)
 もう一つは、天然宝石と石の外観は似ていますが、化学組成や諸性質が異なるものです。 例えば、 チタニヤはダイアモンドによく似た虹のような七色の輝きかあり、非常に美しい石ですが、 化学組成はダイアモンドとは似ても似つかぬ酸化チタンで、硬度も6程度で、宝石としては軟らか い方です。 1950年頃アメリカで合成され、当時は大変な売れゆきでしたが、次第に人気は薄れ ていきました。
 このような、本物の代用に用いられる石を代用人造(人工)宝石と呼ぶこともあります。 ダイアモンドの代わりに用いられるおもなものを別表に掲げました。 このような人造石は、ダイアモンドだけでなく、チタン酸マグネシウム(MgTiO3)のキャッツアイ、バナジウム入りコランダムのアレクサンドライトなどがつくられています。 これらの代用人造(人工)宝石の多くは、天然には産出しない、人間がつくり出した新物質で、電子機器などの工業材料にも利用されます。
 
合成方法
 
Jewelry

ベルヌーイ法
Verneuil process
別名、火焔溶融法=フレームフュージョン法
Flame fusion process

近代科学の発達によって、宝石の結晶がいろいろの元素からできていることが知られてから、多くの人々が元素を混ぜて美しい結晶をつくることを試みました。
最初に宝石級の結晶(ルビー)の合成に成功したのは、フランスの化学者ベルヌーイで、1891年のことです。
しかし、製法が公開されたのは1902年です。
その装置の概略を右図に示しました。(図をクリックすると拡大図が見られます)
ルビーをつくるときには、酸化アルミニウムに少量の酸化クロムを混ぜた原料の粉を上部におき、ハンマーでトントンとたたいて粉を少しずつ下へ降らせます。
粉は落下する途中で、酸素と水素を混合した2000℃程度の火炎で加熱されて溶け、霧状の液滴になり、種子結晶の上に積もって、円筒状のルビー結晶が成長するのです。
Jewelry この方法は、原料粉末を酸水素炎で溶かして結晶を成長させますので火炎溶融法と呼ばれますが発明者の名をとってベルヌーイ法とも呼ばれます。
図左はベルヌーイ法で作られたルビーとサファイアです。
ベルヌーイは三時間で10-15カラットの美しいルピーをつくったといわれていますが、その後装置は改良され、現在は直径10cmくらいの円筒状結晶をつくることができます。
また、ルビーだけでなく、サファイア、スピネル、スタールビー、スターサファイアなどもこの方法で合成されています。

Jewelry リンデスター(Linde Star)
スタールピーや、スターサファイアの場合には、この方法だけではスターが現れませんので、さらにこの合成結晶を約1300℃に一週間ほど保ちますと、原料に加えられていたチタンが、ルチルの針状結晶になって三方向に並んで析出して、スターが現れます。
しかし、困ったことにこのままでは割れやすいので、さらにゆっくり温度を上げ、1870℃くらいになってから、今度はゆっくり室温まで下げます。
そうしますと、かなりショックを受けても割れる心配がなくなります。
こうしてつくられたスター石は、天然のスター石よりも色鮮やかで、しかもスターがくっきりと美しいので、最初に合成に成功したアメリカのリンデ社の名をとってリンデスターとも呼ばれます。
 
Jewelry

フラックス(融剤)法
Flux Growth

ベルヌーイ法は、加熱して溶かした原料を冷やして結晶を成長させる、溶融法という合成法のひとつですが、結晶はすべてこの方法でつくられるわけではありません。
例えば、エメラルドはベルヌーイ法でも合成できるのですが、原料に猛毒の酸化ベリリウムを含んでいますので、この方法を用いるのは非常に危険です。
このような場合や、溶融温度が高い原料の場合には、フラックス法と呼ばれる、比較的低温で原料を溶かすことのできる方法が用いられます。
フラックス法は原料をフラックス(融剤)と混合したものを加熱して溶かし、ゆっくり冷やして結晶を成長させる方法です。
右上図(図をクリックすると拡大図が見られます)のように、白金ルツポの中に種子結晶をつるしておきますと、フラックスに溶けこんだ原料が対流に乗って上昇し、種子結晶にくっついて結晶を成長させますので、大きくてきれいな結晶をつくることができます。
Jewelry このようにして、比較的簡単に、しかもきずの少ない石をつくることができます。
このフラックス法で、エメラルド、アレクサンドライト、ルビー、サファイアなどが合成されています。
「チャザムのエメラルド」は、合成法が公開されていませんが、結晶の性質を調べてみますと、フラックス法でつくられたものに間違いないようです。
「ツェルハスのエメラルド」や「ギルソンのエメラルド」もこの方法でつくられた合成エメラルドです。
左の写真はフラックス法で作られたルビーの群生です。
 
Jewelry

熱水合成法
Hydrothermal Growth

三番目の熱水合成法は天然石と区別しがたい石ができる特徴をもっています。
物質の中には、一気圧のもとでは温度を上げても水には溶けにくいが、高圧にするとよく溶けて熱水溶液になる物質があります。
このような物質を熱水溶液から結晶化させる方法を、熱水合成法または水熱合成法といいます。
この方法では、天然宝石の成長条件に近い条件で結晶が成長しますので、天然石と性状がよく似た宝石ができるのです。
熱水合成の簡単な装置としては、図(図をクリックすると拡大図が見られます)に示すように、600℃程度の温度に上げる電気炉と、1000-2000気圧の高圧容器が用いられます。屑結晶か原料物質を高圧容器の底に入れ、水または育成母液を8割程度注入し、種子結晶をとりつけた枠を入れてふたをします。
Jewelry  
電気炉で加熱すると圧力がかかりますが、底部をやや高温に、上部をやや低温にして、熱水溶液が対流を起こすようにします。
そうしますと、熱水溶液中に溶けこんだ成分が種子結晶に付着し、結晶は徐々に成長します。
この方法では一個の結晶の成長速度が一日に0.03mm程度と非常に遅いので、図のように種子結晶を数多くつるして、一度にたくさんの結晶が得られるように工夫されています。このようにして、エメラルドやシトリン、アメシストなどの水晶が合成されます。
左の写真はこの方法で作られた合成水晶です。
私たちが日頃愛用しているクォーツ時計の水晶発振器には、この方法で量産された水晶か使われています。
 
Jewelry

引上げ法またはチョクラルスキー法
Czochralski Growth

もう一つの合成方法に、ポーランドのチョクラルスキーが発明した引上げ法(チョクラルスキー法)があります。
ルツポの中で原料を溶融し、上から種子結晶をつるして、溶融液面のところで種子結晶と液を十分になじませたうえで、ゆっくり種子結晶を回転させながら引き上げていく方法です(図右参照)。(図をクリックすると拡大図が見られます)

Jewelry  
この方法で、サファイア、ルビー、ペリドート、YAGなどが合成されています。
(写真左は合成されたYAGです)
半導体に必要なシリコンの単結晶もこの方法でつくられています。
今では直径30cm、長さ数10cmの単結晶を得ることができます。
 
 

合成宝石

 
合成ダイアモンド
 合成ダイアモンドについては「購入者の側に立ったダイアモンド入門」第3章 注意事項、合成ダイアモンド の項を参照願います。
 
 
Jewelry
ルビーの合成石
ルビーは純粋の酸化アルミニウムの粉に、少量の酸化クロムを混ぜて溶融すると、美しい赤い色が出ます。
ルビーは合成宝石の中の花形です。 1904年にベルヌイによって初めて生みだされました。
合成でルビーが作られるようになると、宝飾界に大きな変化が生まれました。 何万円の宝石が何百円という値段で手に入るのです。 それは合成であることが明らかにされていて、天然ルビーとは区別されました。 こうして一般の人々に宝石趣味が普及されるうえで大きな役割をしたのは確かです。
同時に天然では得られない大粒のルピーが指を飾ることにもなったのです。 合成ルピーは人工的に作られたものといっても、物質としては天然宝石のルビーとまったく同じものなのです。 そして色は天然に劣らないというよりも、もっと良いといっていいでしょう。 ですから指輪としても、あるいはペンダントに用いられても、ただ見ただけでそれを合成と判断できる人はいないはずなのです。
昔、海外から合成ルビーが輸入されていた頃は、需要者も宝石商もそれを天然であるか合成であるかを識別する知識はなかったといいます。 そこでずいぶん間違えることがあったというが現実でした。 ところが今では合成についての知識が普及し、少なくともベルヌイ法で作ったものは、比較的容易に見分けられるようになっています。
だが、しかしながら一方で合成の技術も進んで、ベルヌイ法のように内部に気泡が見出されたり、レコードの溝のような同心円の成長線が見えたりするものがなくなってくると、合成ルピーか天然ルピーかの判定は大変むずかしくなってきているのもまた確かなのです。
最近の水熱合成法や、新しいファインセラミック界の技術を応用した溶融法で作られたものは、合成であるか天然であるかの識別はきわめて困難なのです。
Jewelry その代りに合成といえどもベルヌイ法のルピーと違って、値段もずっと高価になっているので、この種のルビーは天然と昔の合成の中間と考えてよい品物かもしれません。  ところで天然のルビーはその産出がきわめて少ないし、大きな結晶はほとんど見られません。
そこで10カラット以上の大きいルビーは、一応合成であると疑うのが常識だとされています。
合成ルビーの中でも服部セイコーのビジョレープ・ルビーとか、京セラのクレサンベール・ルビーとかの商品名をもつものは、新しいファインセラミックの製品であって、天然との区別がむずかしいと思います。
図の指輪などに用いられているのは、いずれもこの種のものに属します。 アンダーソンの宝石学の本によると、新しい合成法で作られたルビーの鑑別には、暗室でエックス線照射をし、残光を調べるよりほかの手段はなくなったとされています。 もともと同じ物質なのだから当然だと思います。
 
 
Jewelry
スター・ルビーの合成石
ルビーやサファイアには、丸くカポッション型に磨いて、太陽光線や普通の電球からの光、つまり点光源の光を当てると、六本の光の筋が現れるものがあります。 それをスター・ルビー、スター・サファイアと呼んで宝石として特に珍重しています。ビルマやスリランカなどから産出ますが、合成ルピーや合成サファイアが普及して、天然石か合成石か区別しにくいというので、スター・サファイア、スター・ルビーが人気を得ることになったのです。 スターならば合成はできないだろうと思われたからでもあります。
ところが今から三十年ほど前から合成でスター・ルビーやスター・サファイアが作られるようになりました。
スター・ルビー、スター・サファイアは日本でも早くから作られています。 合成宝石の大手会社の信光社でスター・ルビーが製造されるになり、日本国内よりもアメリカに多く輸出されました。 ですからアメリカ旅行でスター・ルビーの指輪を買って帰ると、実は日本製であったという笑い話もあるくらいです。
天然のルビーやサファイアには、結晶の内部に種々の内包物が存在しますが、それはコランダム以外の別の鉱物であったりするのです。
そんな鉱物の主なものに酸化チタンのルチルという結晶があって、その針状の結晶がルビーやサファイアの中に入っていることが多いのです。
そんな針状結晶は絹のように細いところからシルクと呼んでいますが、シルクがたくさん入ると、そのルビーやサファイアは半透明になり易く、そんなルビーやサファイアの中でシルクが平行に整列して、六十度の角度で交わっている場合があります。そんな結晶を光輪と呼ばれる方向を頭にして丸くカポッションに磨くと、その内部のルチルの結晶で反射した光が、六本の輝いた光条となって現れるのです。 これがスター・ルビーやスター・サファイアです。
合成ルビーでも同じものを作ることができるのですが、それは昔からのベルヌイ法で製造されています。 必ずしも新しい方法を用いなくてもよいのであって、原料の中に酸化チタンを加えることによってできるようです。
合成のスター・ルビーやスター・サファイアでは、光条があまりにも鋭く明瞭に出るので、それと鑑別し易いのですが、近頃はもっとぼやけて天然石に似たものも作られています。

このようにスターが出る現象をアステリズムと呼びますが、アステリズムはコランダムだけではなく、いろいろな鉱物の結晶に見られます。 キャッツ・アイの猫の瞳孔に似た一本の光条も同じような似た現象から生まれるのですが、水晶でもガーネットでも内部に他の細かい鉱物が入っているとアステリズムを見せることがあります。 ガーネットの場合は光の筋は六本ではなく四本で十字になって現れます。

そこでスター・ルビーやスター・サファイアのイミテーションも作られています。 まず、スターの出る水晶を磨いてスター・水晶を作ります。 ついで、水晶では光条がはっきり見えないので、その底面に光をよく反射する赤や青のガラスを貼って、スター・ルビーやスター・サファイアに見せるのです。
 
 
サファイアの合成石
ルビーと同じくコランダムで色が青いのがブルーサファイアです。 サファイアとは青を意味する言葉ですが、1904年にベルヌイはルビーを作りましたが、青いサファイアのほうはなかなかできませんでした。 クロムが入ると赤くなってルビーになるのですが、青くするのにはコバルトを入れたらよいだろうと試みたのですが、コパルトだと青い斑点ができるだけで、全体が青くは染まらなかったのです。
いろいろ試みるうちに酸化マグネシウムを加えると、コバルトで青く染まった結晶ができました。 だがそれはもうコランダムではなくてスピネルという鉱物だったので、ブルー・スピネルが合成でできたというわけでした。 本当のサファイアが合成されたのはルビーの四年後で、1907年でした。 そのサファイアの青色は鉄とチタンを加えることによって出たのでした。 天然のサフアイアの青色も鉄とチタンですから、これで正しくサファイアが合成でできたというわけです。
サファイアも同じくベルヌイ法で合成されるのですが、ルビーと同様最近では水熱法や新しい溶融法で作られますから、天然サファイアと見分けにくいものができてきています。
ルビーやサファイアは純粋の酸化アルミニウムに酸化クロムや酸化鉄、酸化チタンを加えて融かすのですが、そんな着色剤を加えないと、無色透明のコランダムができ、それをホワイト・サファイアと呼んでいます。
サファイアといえば青ということであり、サフアイアは青石の代表となっていますが、なぜか赤以外のコランダムはサファイアの名で呼ばれています。 赤だけがルビーで、他の色はすべてその色の名前をつけてサファイアと呼ぶのです。
Jewelry 面白いのはルビーの赤の色が薄いともうルビーとは呼ばないのです。 ピンク・サファイアというのです。 だから無色透明はホワイト・サファイアということになります。 それは天然石でも合成石でも同じであって、黄色ならばゴールデン・サファイア、やや赤味がかったオレンジ色のコランダムはパパラチアと呼ばれています。
合成コランダムの宝石として近頃人気があるのはパパラチアのようです。 パパラチアというのはスリランカに産出するこの種の色のコランダムにつけられた名前で、パパラチアというのはハスの花のことであると言われています。 スリランカの仏教と関係がありそうです。 天然のパパラチアはかなり珍しい石です。
黄色のゴールデン・サファイアは合成でも作られていますが、伊那宝石という会社がそれをリーガル・トパーズという名前で売りだしています。 トパーズは黄色の宝石の代表とされているからです。
無色のホワイト・サファイアはダイアモンドのイミテーションに使われることもありますが、合成ホワイト・サファイアの重要な役目はいろいろな工業的用途にあるといえるでしょう。 蓄音機のレコードの針もそうですし、近頃は高級な時計ではガラス板に代ってホワイト・サファイアが使われています。
 
 
Jewelry
エメラルドの合成石
エメラルドは、ルビーとともに色石の中では高価な宝石ですから、古くから人工的につくる試みがなされてきました。合成エメラルドが「イグメラルド」と名づけられて、売りに出されたのは一九三〇年のことですが、そのうちに世界大戦が起こって、エメラルドの合成は下火になりました。
イグメラルドの製造法も公表されないままでした。
Jewelry 戦後まもなく、「チャザムのエメラルド」が売りに出されました。これはサンフランシスコに住んでいたチャザムが奥さんと二人だけで合成したエメラルドで、それから十数年の間、合成法を秘密にして世界市場を独占してきました。
ところが、一九六二年にドイツのツェルハスが「ツェルハスのエメラルド」を、一九六三年にはフランスのギルソンが「ギルソンのエメラルド」を相次いで市場に送り出しましたので、合成エメラルド市場は俄然活気を呈してきました。その後、日本をはしめ世界各国で、エメラルドの合成は盛んに行われています。
現在では、エメラルドはフラックス法、熱水合成法、火炎溶融法、気相固体反応法などによって合成されていますが、年々合成技術が向上して、宝石の専門家でも天然石と合成石の鑑別が困難なほどになっています。

 各社の製法

エメラルドの合成はルピー、サファイアよりずっと遅れて登場しました。 それはエメラルドは当初は溶融法で作ることができなかったからです。 ですから長い間エメラルドの代りにはエメラダと呼ばれる、緑色のスピネルが用いられていました。

Jewelry 合成エメラルドは第二次大戦後しばらくたった頃、アメリカのチャザムという化学者がその製造に成功しました。 エメラルドはベリリウムという金属と、二酸化ケイ素と酸化アルミニウムを成分とする鉱物で、わずかに合まれるクロムによって美しい緑が現れるのです。
チャザムはこれらの成分をもとに、フラックス法と呼ばれる方法でエメラルドを合成するのに成功しました。 チャザムのエメラルドは最初は合成であることを隠して売られたらしいのですが、エメラルド特有のキズもなく内包物もなくて美しすぎるので、合成であることが見破られました。
するとチャザムはその中にヒピも入れるし、藻のような内包物も入れて天然石と見分けがつかないようにしました。 ですが比重が少し軽いので鑑別することができましたから、その後は彼は堂々とチャザム・エメラルドと名果ったのです。
アメリカでは合成宝石に対する抵抗は少ないので、人気を得てよく売れました。 値段は一カラット十万円ぐらいだったが、それでも天然エメラルドの十分の一以下というので喜ぱれました。 そこでチャザムにならっていろいろと合成エメラルドが作られるようになっていったのです。

チャザムに次いで現れたのは同じくアメリカのリンデ社の製品で、それはチャザムと違って水熱法によったものでした。
日本でも山梨大学の国富稔教授がエメラルド合成の研究をし、初めてその結晶を作りましたが、商品になるまでには至りませんでした。

リンデに次いで商品化されたのはスイスのギルソンによって合成されたエメラルドでした。 ギルソンのエメラルドはダイアモンドを配して、白金の指輪にセツトして売られました。

日本で合成エメラルドを最初に商品化したのは京セラであって、1976年にクレサンベール のエメラルドと称して売り出されました。 1979年には合成水晶の大手メーカー、日本電波工業がサラマンドール・ブランドを、1987年には諏訪精工舎がビジョレーヴ・ブランドのエメラルドを発表しましたが、京セラ社以外は今では見かける事はありません。
 
 
Jewelry
合成アレクサンドライト
アレクサンドライトは昼光色で見ると青緑色だが、電灯(蛍光灯は昼色光と同じ)の光やロウソクの光で照らしてみると赤くなって見える宝石です。
宝石の中で最も珍しく、特別に高価な石ですが、それも近年合成によって人工的に作られるようになりました。
アレクサンドライトは帝政ロシアの時代にウラル山で発見され、当時の国王の名前をとってアレクサンドライトと命名されました。 鉱物としてはクリソベリルに属します。
アレクサンドライトは、今はソ連のウラル山からは出なくなって、もっぱらスリランカ産のようです。 しかしブラジル産も多少出回っているようです。
Jewelry アレクサンドライトはその中に含まれる発色成分のために、光の中にある波長のものが吸収されることによってその色が出るのですが、昼の光と灯火の光でも色の成分が違うので異なった色が現れるわけです。 そして、アレクサンドライトの色変りは主としてクロムやネオジムが原因となっているようです。
このような色変りの現象はクリソベリルに限らず、いろいろな物質に見られるわけであって、そこで合成アレクサンドライトという名前で作られている、いろいろな材料の模造石があったのです。
その種の合成石で早くから作られていたのは、合成ルピーと同じコランダムであって、ベルヌイ法のコランダムにバナジウムを加えるとアレクサンドライトと同じような色変りを見せるのです。 この石は日本でも作られていたが、エジプトのアレキサンドリア土産として名物になっていたようです。
同じように合成スピネルにバナジウムを加えたものは、一層色変りが顕著ですが日本の市場では見かけたことはありません。
クリソベリルの合成アレクサンドライトが誕生したのは十年程前で、アメリカでその合成に成功しています。 そして間もなく日本では京セラが作りだしましたが、合成とはいえ値段はそれほど安いものではないようです。 しかし天然の良質のアレクサンドライトは骨董的価値がきわめて高いので、合成石でも市場価値があるようです。 結晶内部の針状結晶の状態で天然石との識別は可能だとされています。
アメリカロシア日本の合成への動き、合成アレクサンドライトの値段、合成アレクサンドライトの天然との識別について、アレクサンドライトのイミテーション(Alexandrite simulants)、などの 詳細については別項をご覧ください。
 
 
合成アメシスト(紫水晶)
合成宝石を語るとき、水晶の合成のことを忘れるわけにはいかない。宝石の水晶としては合成アメシストや、また天然にはないがプルーの水晶が作られている。これらの合成紫水晶などはソ連で開発され、ブルー・クォーツはアクアマリンの模造石に使われている。
合成水晶は最初宝石よりも発振器用の水晶として開発されたものであって、それは水熱合成法が鉱物の製造に応用された最初のものであった。水熱合成法は経費のかかる方法だと思うが、そこで安い準宝石である無色の水晶を合成したって意昧はないわけである。だが溶融したのでは水晶は結晶性を失って石英ガラスになってしまうから、水晶を作るのには役立たない。
ところで水晶発振器用の結晶は高価であるし、天然の水晶の結晶では大きくても双晶が伴って発振器には使えない。それに水晶発振器は特別の結晶方向が必要なので、どうしても人工的に適当なものを作らなければならない。そこでこの目的に水熱合成法が用いられるようになったのである。
今日では時計はみんなそれを使ったクォーツということになってしまったから、電波工学に使うだけでなく、合成水晶の需要はきわめて大きいものになっている。
そこで合成水晶は工業的にきわめて重要なものなのだが、費用のかかる合成水晶も、値段の高い紫水晶のアメシストなどを目的とするのなら、宝石に使っても引き合うだろう。こうしてソ連で合成アメシストが生まれた。
紫色のアメシストは現在日本でも作られるようになっている。それは合成水晶に鉄分を加え、でき上がったものに放射線を当てるとアメシストの紫がでるのである。合成アメシストは天然のアメシストとほとんど区別ができないのだが、値段は同じだから問題は起こらないであろう。水晶は昔から甲州の名物だったし、美しい紫水晶もあったという。今はほとんどがブラジルから原石を輸入して研磨しているのだが、合成アメシストなども甲州名物にしたらよいと思う。
水晶を合成する水熱合成法では、鋼鉄が腐食されるのを防ぐために内面に銀を貼ったオートクレーブ(高圧反応器)の中に、水酸化ナトリウムの水溶液を入れ、底に水晶の屑を入れておいて、100気圧、温度400度Cにすると水晶はアルカリ溶液の中に溶解する。そこでオートクレープの上部に小さな水晶の結晶の種子を吊し、その部分を325度Cに保っておくと、溶けている二酸化ケイ素は湿度が低いのでその部分に析出してきて、種子の上に成長する。
そして次第に水晶は大きく育っていくのだが、成長の速度はかなり遅くて、十センチの水晶ができ上がるのに一か月ぐらいかかるのである。
日本でこの方法による合成水晶の研究を最初に行った人は山梨大学の故国富稔教授で、その結果は水晶発振器の合成水晶の工業化に導かれたのである。合成水晶に着色が行われたのはソ連が初めらしいが、アメシストのほかに、青、黄、赤、緑などの水晶もできている。
 
 
Jewelry
合成オパール
オパールはかつて合成が最も困難な宝石と考えられていた。オパールが二酸化ケイ素の鉱物でわずかな水分を含む蛋白石であることは分かっていたが、あの虹色のフアイアが現れるメカニズムがよく分からなかったからである。ルピー、エメラルドとさまざまな宝石が合成され、合成法もいろいろと開発されたのだが、オパールはどうしてもうまくできなかった。
オパールの主要な産地はオーストラリアである。そしてそのオパールは水に溶けた二酸化ケイ素が砂漠の岩の間に沈澱して、固まってできるのであろうが、虹色のフアイアは石の中にきわめて細かい亀裂ができ、それによって光が干渉という現象を起こしてスペクトルの色が出るものと考えられていた。
オーストラリアのメルボルン大学のサンダース教授はオパールの構造と、虹の輝きのメカニズムに取り組んだ。そして電子顕微鏡を使って拡大して調べたところ、オパールの中では微細な二酸化ケイ素の丸い玉がぎっしりと集まって規則正しく凝集しており、その隙間に水の分子が入っていることが分かったのである。このような構造をもったオパールの中に日の光が進入すると、回折という現象を起こして白色光線は七色の虹の光に分散されるのである。
オパールがこのような性質を示すのには、二酸化ケイ素の球の大きさが決まっていて、粒子がそれより大きくても小さくても虹の色は出ないのである。また、球の凝集が不規則であってもだめである。
そこでもし二酸化ケイ素でこのような構造のものを作ったら、オパールは合成できるわけである。美しく輝くオパールの場合、その単位粒である二酸化ケイ素の球の大きさは直径が二十から五十ナノメートル程度で、それが規則正しく配列し、球と球との間の隙間に水がある、という構造をどうしたら作りだせるのであろうか。
それに取り組んだのはフランスに合成宝石の工場をもつ、スイス人のギルソンであった。ギルソンはすでにエメラルドの合成に成功して、それを売りだしている人物だが、彼はこの種の研究の天才であろうか、たちまちこのようなオパールを作り上げてしまった。
ギルソンは、四エチルケイ酸の水溶液を使って、分解によってオパールの単位粒子になる二酸化ケイ素の微細な球を生成させ、遠心分離機で長時間かけてその球を凝集させた。そして独特の色やファイアが出るようになったら、それを固化させてオパールを作りだした。
こうしてまず白色オパールを作り、次に見事なブラック・オパールを作るのにも成功した。ギルソンのオパールは天然オパールのすべての性質を具えて鑑別がむずかしく、世界の宝石業者を悩ませたものだったが、美しいオパールが合成でできて安く買えるので愛好者たちは喜んだと思う。
だがギルソンのオパールも顕微鏡で調べると、天熊石と違った特徴も存在する。モザイク模様の中にリザード・スキンと形容される、鱗のような構造があるのであって、これは天然石にはないものだった。
 
 
えせ合成トルコ石
Imitation Turquois
1971年に、宝石の合成で有名なフランスのギルソンが、天然トルコ石とほとんど同じ性質をもったトルコ石の合成に成功し、市場に供給しています。
このように、天然のトルコ石に似せた、ガラス製や陶器製をはじめとする模造品、処理トルコ石、合成トルコ石と称するものなどがたくさんあり、それらは外観では識別がむずかしいので、十分注意する必要がありましょう。
 
 
えせ合成さんご
Imitation Coral
合成トルコ石、合成ラビスと同様に粉末成形による合成さんごが、ギルソンから供給されています。 色は天然さんごの範囲と同しく、白色からボケを含んで血赤色まで8種の色のものがあります。

 
 
えせ合成ヒスイ
Imitation Jadeite
本ヒスイ、つまりジェダイトは輝石鉱物に属し、その成分はソーダ・アルミナの珪酸化合物です。
そしてその美しい緑色は、微量に含まれる酸化クロムによって着色されています。
ただし、その構造は単結晶ではなく、微晶質集合からなっています。
ヒスイ合成をなんとか実現しようとする試みは、これまでにもしばしば行なわれたようですが、しかし、ヒスイにかぎらず現状の人工結晶育成の技術は、すべて単結晶体のみであり、微晶質集合構造の合成石は、実際にはまだ成功した例はありません。
 (ギルソンの合成トルコ石などは粉末焼結で、この構造ではありません)
したがって合成ヒスイも、合成技術者にとっては長年の夢ではありますが、まだ実現をみていません。
これまで、合成ヒスイと称して市場に一時流通したものは、染色ジェダイト(品質の悪い(組織の粗い)原石に染色処理を施したもの)を高価に売らんかための方策の一つにすぎなかったことが明らかにされています。
なお、本ヒスイ類似にきわめて精巧につくられていても、それがガラス質であるならば、それは模造石(イミテーション)であって、合成ヒスイと呼ばれるべきものではありません。
このほか、偽物としては、天然クォーツァイト(珪岩)を染色処理したものがあり、見た目では業者もだまされるといいます。

 
 
 

合成石の諸元


鉱物名・宝石名
英語名

RI: 屈折率
DR: 複屈折率

明度

主な色

H: 硬度
SG: 比重

分子式

主要合成宝石のリスト
合成ルビー
Synthetic Ruby
(Chatham)(Verneuil)
RI: 1.762-1.770
DR: 0.008
透-不H: 9.0
SG: 3.97-4.03
Al2O3
合成ルビー
Synthetic Ruby
(Kashan)
RI: 1.762-1.770
DR: 0.008
H: 9.0
SG: 3.97-4.03
Al2O3
合成サファイア
Synthetic Sapphire
(Chatham)
RI: 1.762-1.770
DR: 0.008
H: 9.0
SG: 3.97-4.03
Al2O3
合成サファイア
Synthetic Sapphire
(Verneuil)
RI: 1.762-1.770
DR: 0.008
透-不H: 9.0
SG: 3.97-4.03
Al2O3
合成コランダム
Synthetic Corundum
RI: 1.762-1.770
DR: 0.008
透-不全色H: 9.0
SG: 3.97-4.03
Al2O3
合成アレクサンドライト
Synthetic Alexandrite
RI: 1.746-1.755
DR: 0.008-0.010
緑/赤に変化H: 8.5
SG: 3.73
BeAl2O4
合成スピネル
Synthetic Spinel
RI: 1.720-1.740無/桃/橙/赤/黄
緑/青/紫/他
H: 8.0
SG: 3.61-3.78
MgAl2O4
合成亜鉛スピネル
Synthetic Gahnite
RI: 1.805H: 8.0-7.5
SG: 4.40
ZnAl2O4
合成エメラルド
Synthetic Emerald
(Chatham)
RI: 1.561-1.564
DR: 0.003-0.005
H: 8.0-7.5
SG: 2.65-2.67
Be3Al2|Si6O18|
合成エメラルド
Synthetic Emerald
(Gilson)
RI: 1.562-1.567
DR: 0.005
H: 8.0-7.5
SG: 2.64-2.69
Be3Al2|Si6O18|
合成エメラルド
Synthetic Emerald
(Lechleitner)
RI: 1.566-1.581
DR: 0.005
H: 8.0-7.5
SG: 2.68-2.70
Be3Al2|Si6O18|
合成エメラルド
Synthetic Emerald
(Linde)
RI: 1.566-1.571
DR: 0.005-0.006
H: 8.0-7.5
SG: 2.67-2.69
Be3Al2|Si6O18|
合成ルチル
Synthetic Rutile
RI: 2.616-2.903
DR: 0.287
透-不無/黄系H: 6.5-6
SG: 4.24-4.28
TiO2
合成オパール
Synthetic Opal
(Gilson)
RI: 1.44透-不白/黒
play of color
H: 6.0-5.0
SG: 2.05
SiO2+ aq.
合成アメシスト(紫水晶)
Synthetic Amethyst
(Gilson)
RI: 1.544 - 1.553
colour centers
H: 7.0
SG: 2.66
SiO2

本当の合成宝石が作れていないもの
えせ合成トルコ石
Imitation Turquoise
(Gilson)
RI: 1.610-1.650
DR: 0.040
透-半H: 6.0-5.0
SG: 2.72-2.74
CuAl6|(OH)2|PO4|4 + 4H2O
えせ合成ラピスラズリ
Imitation Lapis Lazuli
(Gilson)
RI: ca. 1.500H: 4.5
SG: 2.38
pressed components
 
 



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