キンバリー・プロセス
EUの取り組み


 
キンバリー・プロセスとは各参加者の責任ある行動がカギEUの照準はどこに



宝石類に少しでも興味のある人 −女性ならなおのこと− ならば、ダイヤモンドの価値を決めるのは「4つのC」、
すなわち Color(色)、Clarity(透明度)、Cut(カット)と Carat weight (カラット数)であることはご存知でしょう。
2003年以来、国際社会はこれに5つ目のCに、新たに「Conflict(紛争)」が加わらないよう、キンバリー・プロセスという証明制度(Kimberley Process Certification Scheme)を導入して規制を強化しています。


キンバリー・プロセスとは


キンバリー・プロセスとは、各国政府、国際ダイヤモンド業界および非政府組(NGO)などの市民社会が手を携え、 いわゆる「紛争ダイヤモンド(紛争国において反政府組織が資金源として採掘するダイヤモンド原石)」の取引を、原産地証明書(キンバリー・プロセス証明書)の添付を義務付けることで封じ込めようとするユニークな制度です。
今年1月より欧州連合(EU)は輪番制であるこのキンバリー・プロセスの議長を務めており、制度の実効性を高めるために、各管理手段の効果的実施と、残された抜け穴の封鎖を目指し取り組んでいます。
キンバリー・プロセスはEU域内では、EU規則に基づき、税関業務を行い、証明書を発行する各加盟国政府の支持を得て実施されています。

世界広しと言えども、ダイヤモンドほど富が凝縮している物質はないかもしれません。
小さい割りに莫大な価値があるゆえ、マネーロンダリング(資金洗浄)や、武器購入といった非合法な活動に用いられやすいのも特徴です。
紛争ダイヤモンドの問題については、1990年代にいくつかのアフリカ諸国においてすさまじい殺リくを伴う紛争を目の当たりにした結果、国際社会がその資金源を断つべく本腰を入れて取り組み始めたのです。

キンバリー・プロセスの名前は、この制度を立ち上げようと2000年に話し合いが開始された南アフリカの町に由来します。
ここもまた1870年代にダイヤモンドが発見されてから爆発的に開拓された場所です。
キンバリーでの会合の結果を受けて、国連がダイヤモンド原石の国際的証明書制度の設立を支持する決議を採択し、2002年11月にはすべてのダイヤモンド原石の輸出入を管理し、生産と貿易に厳しい規制を導入することによって、紛争ダイヤモンドを合法的ダイヤモンド市場から閉め出す制度を立ち上げることが合意されました。



各参加者の責任ある行動がカギ


キンバリー・プロセスに参加すると、ダイヤモンド原石の取引は制度参加者間のみに認められます。
また、すべての原石にはその採掘は紛争とは無関係であったことを示す「キンバリー・プロセス証明書」の添付が義務付けられます。
1月現在、日本を含む71カ国を代表する45の参加者がこの制度に参加しています。
ちなみにEUはその27加盟国を代表して制度に加わっています。

この制度は国際条約に裏打ちされているわけでなく、それぞれの参加国がその条項を遵守し、そのために国内法を整備するという約束に基づいています。
ゆえに、その成功は参加者の国内的取り組みにかかっているのです。
本部も常駐スタッフもな<、制度の維持に要する費用はすべて議長国が支出します。
また、民間部門や市民社会もそれぞれこの制度に何らかの貢献をしています。

このように特異性はあるものの、キンバリー・プロセスが他の国際的取り決めに比べ見劣りすることは全くありません。
実際、2006年の調査では1990年代にダイヤモンド市場に出回っていた原石の15%が紛争ダイヤモンドだったとされていますが、現在ではそれは1%未満に滅少したことが報告されています。
今日では反政府組織がダイヤモンド採掘地域を制圧している例はアフリカのコートジボワールだけであり、ここから採掘される原石は世界の総産出量の0.2%未満だとされています。
これらの原石についてもキンバリー・プロセス参加者は国連と協力して、合法的市場に入り込まないようにする手立てを講じています。



EUの照準はどこに


EUは2003年2月以来、主に3つの理由からこのプロセスに積極的に関与しています。
第1に、世界のダイヤモンド原石の約8割かベルギーのアントワープを経由しており、ロンドンと合わせると欧州は世界最大のダイヤモンド取引市場となっています。
また、研磨などの加工を経た宝飾品の多くも欧州で売られています。
このように欧州がダイヤモンド業界に膨大な利権を有している以上、その貿易に関する協議には積極的に関与せざるを得ない状況にあるのです。

第2に、EUはキンバリー・プロセスを一種の紛争防止手段と考えており、それによって規制が改善され、結果としてより公正で公平な世界貿易の確立に有益であると信じているのです。

第3に、EUはこの制度が脆弱な国家の安定化を促し、その持続的成長を支える有効な手段だと考えています。
キンバリー・プロセスのひとつの効果として挙げられるのは、それまで各ダイヤモンド産出国内で並存していた裏経済のネットワークをいわゆる「表の経済」の中へ組み込むのを支えてきたことです。
これによって各国の国庫にかなりの収入をもたらし、これらの国々は自国の成長か管理しやすくなっています。

議長としてのEUは「紛争ダイヤモンドから繁栄ダイヤモンドヘ(From Conflict Diamonds to Prosperity Diamonds)」という合言葉のもと、キンバリー・プロセスに対して主に2つの点に優先的に取り組む予定です。
まず、定期的に行われる専門家による視察、統計の発表、内部管理の強化、透明性の向上といった構造的要素の効果を高めることで制度そのものをさらに強化すること。
そして第2に、制度を弱体化しうるあらゆる危機に対し積極的に対応することです。
具体的には反政府勢力が支配するコートジボワール北部産出の紛争ダイヤモンドが、隣国ガーナを経由して「合法化」されないようにすることか最優先課題であり、国連と連携して事態を監視しています。
また、アマゾン地域で横行しているとされるダイヤモンドの密輸についての調査も実施予定です。

折しも、4月には人気俳優レオナルド・ディカプリオ主演の映画『ブラッド・ダイヤモンド』が日本で封切られました。
この映画は1990年代に激しい内戦状態にあった西アフリカのシエラレオネを舞台に、不法なダイヤモンド取引の引き起こす悲劇を描いています。
1月にプリュッセルで開催された試写会で、ベ二ータ・フェレロ=ヴァルトナー欧州委員会対外政策・近隣諸国政策担当委員が述べた次の言葉が、キンバリー・プロセスに対する欧州の期待を示しています。
「ダイヤモンドの密輸を完全に撲滅することは不可能かも知れないが、キンバリー・プロセス参加者全員がそのルールを完璧に遵守すれば、合法的な供給者からダイヤを買う消費者は、その行為で戦争を支援してはいないと確信を持てるのです」。


関連ウェブサイト:
http://www.kimberleyprocess.com
http://ec.europa.eu/comm/external_relations/kimb/intro

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