鉱石ラジオ



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回路図に使用する略式記号
 
このラジオの構成は非常に簡単なものです。
  1. アンテナとアース
    (電波を受け、電流に変える)
  2. 同調回路
    (目的の電流を選ぶ)
  3. 検波回路
    (音声成分を取り出す)
  4. 出力回路
    (音声成分を音に変える)
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鉱石ラジオの構成図

 
夫々の回路と構成する部品の要約を説明しましょう。
 

アンテナとアース Antenna and Ground

アンテナは、空中を伝わってきた電波をキャッチします。
電波を受けとる、アンテナ antennaアース ground の説明です。
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アンテナ回路の位置づけ
 

アンテナ antenna

電波は「波」の性質があるため、電波の揺れる速さ(周波数)によって、
よくキャッチできる金属のサイズや形状が決まっているのです。
そのサイズはAMラジオ(中波放送)の場合、187〜565メートルに相当します。
しかし、これだけ大きな受信アンテナは、現実的ではありません。
でも、実際には数メートルの電線だけでもアンテナとして効果があります。
そこで、鉱石ラジオの場合、AM放送の電波をよりキャッチするために
「少しでも長く、高く、大きなアンテナを準備すべき」と言われています。

アース
カウンターポイズ Counter poises についてはアースの項をご覧ください。


鉱石ラジオで実際に必要なアンテナの長さは一概には言えませんが、
放送塔の近く以外では、アンテナ線として数メートルから20メートル程度は必要かもしれません。

本来は、屋外に電線「ワイヤーアンテナ」=(空中線)を高く、長く張るのが最も良いのですが、風雨による損傷、落雷等に注意する必要があります。
木造住宅であれば、「屋内のアンテナ」でも効果があります。
部屋の天井の縁に沿って、電線をできるだけ長く張ると良いでしょう。
極端な話、金属物体であれば全てアンテナになります。
電波が強ければ簡易な金属の棒が伸縮するタイプのアンテナ「ロッドアンテナ」もあります。

屋内のアンテナ ロッドアンテナ
屋内のアンテナ ロッドアンテナ

ループ式のアンテナ
ループ式のアンテナ
 
長い線を張れないなら、「ループ式のアンテナ」と鉱石ラジオを窓際に置く方法が良いかもしれません。

電灯線(交流100Vの屋内配線)は、建物に広く張り巡らされており、アンテナとして働くことが期待できます。
「電灯線アンテナ」は、コンセントの片方だけ耐圧の高いコンデンサーを経由し、ラジオに接続することで利用できます。
しかし、素人工作では、感電や電気火災の原因になります。
そこで、コンセントに挿し込んだ電気製品のコードに、ラジオのアンテナ線をぐるぐると10回以上巻きつけて、電磁気的に誘導結合させる方法をお勧めします。
なお、マンションなど鉄筋コンクリート住宅の電灯線アンテナは、効果が得られにくい傾向があります。
 
電灯線アンテナ
電灯線アンテナ
 
 
市販のアース棒
市販のアース棒
 

アース ground

一般にアースというと、保安用(感電防止)アースや避雷・雷防護用アースを想像されがちですが、 鉱石ラジオのアースはアンテナの構成要素の一部として「大地を利用するアース」です。 鉱石ラジオは、トランジスターラジオのように音量を増やす回路(増幅回路)がありません。
そのため、できるだけアンテナ回路で多くの電波をキャッチすることが大切です。
効率よく電波をキャッチする方法として、トランジスターラジオでは通常使いませんが、
鉱石ラジオではアースを使用すると良いのです。

アースは適度に湿り気のある地面に、できるだけ大きな銅などの金属棒や金属板を埋めることで良好に働きます。
市販のアース棒はもちろんですが、例えば、数個の空き缶を電気的につなぎ合わせて地面に埋めても、効果があります。
アンテナと異なり、ラジオからアースまでの電線は、できるだけ短い配線にします。
 
特殊な方法として「カウンターポイズ」Counter poises があります。
地面が乾いていたり、アースがうまくとれない場合にとる方法で、地上30cmくらいの高さに10-15mくらいの絶縁被覆された銅線を張り、大地とは絶縁してあるものです。
これは必ずしもワイヤーアンテナの下に設置する必要はありません。
普通のアースよりも分離性がよくなることもも多いようです。
アンテナ回路はコンデンサーの片方をアンテナとし、もう片方を接地してアースとして受信効果を高めているのですが、アース自体がよくとれなければ、いけないので、必ずしも接地だけがアースの方法ではないのです。
(アンテナの項の図を参照してください。)

水道管アース
簡易な水道管アース

住宅事情によっては、アースもカウンターポイズも準備できない場合があります。
そこでよく使われるのが、「水道管アース」です。
金属製の水道管は地面を通過するので、これがアースの代役になります。
ただし、途中に塩ビ管などの非金属製のパイプが存在すると、アースとして使えません。


 

同調回路 Tuned circuit

同調回路は、目的の電波(ラジオ放送)を1つだけ選びます。
同調回路では、コンデンサー capacitor (originally known as condenser) と コイル coil を使用します。
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同調回路の位置づけ
ポリバリコン
ポリバリコン
 
エアバリコン
エアバリコン
 

コンデンサー capacitor

コンデンサーは2枚の金属板を平行に配置して、接触しない状態の基本構造を持ち、
電気を蓄える性質があります。
一般に、電気を蓄えられる量(容量)を変化できるコンデンサーは、
可変容量コンデンサー(通称「バリコン variable capacitor」)と呼ばれています。
鉱石ラジオではバリコンの誘電体にポリエステルフィルムを用いたポリバリコン polyvariable condenser と 絶縁体を身の回りの空気に置き換えたエアバリコン variable capacitor を使用する例が多いようです。
いずれも部品を小型化させるため、使用する金属板は基本構造の2枚ではなく、
複数の金属板を狭い間隔に並べています。
軸を回転させると、金属板が重なり合う面積が変化し、電気を蓄える量(容量)が変化します。

なお、使い道が異なるもので、同じく電気を蓄えるものに、充電式のバッテリーがあります。
バッテリーは大容量で充電し、電気製品にパワーを送ることが大切です。
これに対し、バリコンはとても僅かしか充電しませんが、きめ細かに容量を変化させる事が重要な精密部品です。
 

コイル coil

バーアンテナ
バーアンテナ
 
並四コイル
並四コイル
コイルは電線が規則的に巻かれた基本構造を持ち、電気と磁気を交互に変換できる性質があります。
つまり、コイルに電気を流すと磁気を発生させ、コイルに磁気を通過させると電気を発生させようとします。
同調回路で使うコイルを、同調コイルと言います。
特性が可変する同調コイルは、μ同調コイル(「μ」の発音は「ミュー」)と呼ばれています。
実際には、コンデンサー側で可変させる例が多いため(バリコンを使うため)、 μ同調コイルの使用例は少なめです。

コイルは巻き方や構造、材料などが異なると、特性の異なったコイルに仕上がります。

市販品の同調コイルでは、フェライトと呼ばれる磁気を通しやすい素材にコイルを巻いた、 バーアンテナがあります。
バーアンテナは同調コイルですが、トランジスターラジオで使用した場合、
磁気を通しやすい性質がアンテナの作用も十分兼ねることが可能なので
「フェライトバー同調コイル」と言わずに「バーアンテナ」と言っています。
鉱石ラジオにも使用できますが、多くの場合、別にアンテナとアースが必要でしょう。

そのほか、並四(なみよん)と呼ばれる構造の真空管式ラジオで使われた並四コイルも、
鉱石ラジオに使用できます。
 

検波回路 Crystal detector

検波回路は、電波から音声信号を取り出すため、
鉱石検波器 cat's whisker detector または ダイオード diode(検波器)を使用します。
また、受信状況によっては、抵抗器 resistor も併用します。

検波回路の位置づけ
検波回路の位置づけ
 

鉱石検波器 cat's whisker detector (sometimes called a crystal detector)

鉱石検波器(その1) 鉱石検波器(説明図)
鉱石検波器(その1) 鉱石検波器(説明図)
 
AMラジオの電波は、波の大きさ(信号の大きさ)によって音声信号を表現する振幅変調を使用しています。
この振幅変調から音声信号を取り出すことを検波と言い、検波を担当する部品を検波器と言います。
この部品の検波回路に鉱石を用いたものが鉱石ラジオです。
ラジオ放送の電波を受信する場合、電波から音声信号を取り出す(検波という)には、
電流を一方向だけ流す整流作用を持つ鉱石に電気信号を通します。
整流作用を持つ鉱石には、方鉛鉱 Galena、黄鉄鉱 Pyrite、紅亜鉛鉱 Zincite、斑銅鉱 Bornite、黄銅鉱 Chalcopyrite、輝水鉛鉱 Molybdenite 等があります。
これらの半導体の性質を有する鉱石の結晶の表面の適切な位置に細い金属針
(「猫のひげ」と呼ばれています)を接触させると、整流作用を持つ性質があります。
これは世界最初の半導体部品といえます。
点接触型ダイオード、ショットキーバリアダイオード Schottky barrier diode: SBD の原型でもあります。
鉱石へ接触させる金属針の接触位置によって整流作用の状態が大きく変わるため、
微妙な調整が必要で、この場所を探し当てるのも楽しみの一つです。

鉱石検波器(その2)
鉱石検波器(その2)

 

ダイオード diode

ゲルマニウムダイオード
ゲルマニウムダイオード
電気が良く流れる物体を導体、流れない物体を不導体と呼びます。
検波回路で使われるダイオードは半導体(電気の流れやすさが中間的な物質)を利用した部品です。
その後、鉱石(ゲルマン鉱)の成分であるゲルマニウムを、
ガラス管に封じたダイオードが開発されました。
このダイオードは振動に強く、微弱な信号でも検波できることが知られています。
無調整で手軽に利用できたため、鉱石ラジオの検波器として利用されるようになりました。
そこで鉱石ラジオで、検波器にゲルマニウムダイオードを使用したものを
ゲルマニウムラジオ、略してゲルマラジオと呼ぶようになったのです。
 

抵抗器 resistor

ダイオードで検波した直後の信号は、音声信号を含んだ交流成分と、
音声の情報を含まない直流成分が混在しています。
特に電波の強い地区では、直流成分が強すぎることで、
逆にイヤホンの音量が弱まってしまう場合があります。
この場合、抵抗器を1つ併用することで、直流成分を抵抗器に逃す方法が有効です。

抵抗器の電気抵抗(抵抗値)は、適切な値を選ばないと効果が得られません。
抵抗値が高すぎると効果が不十分であり、
逆に低すぎると音声信号までも弱めてしまうからです。
適切な値の抵抗値では、音声波形を滑らかにすることが知られています。
抵抗値はカラーコードと呼ばれる色の帯(通常4本)で表現されます。

抵抗器 カラーコード(説明図) カラーコード(説明図)
抵抗器 カラーコード(説明図) 抵抗器(説明図)
カラーコードの詳細はこちらをご覧ください。


 

出力回路 Earphones

出力回路は、音声信号で音を鳴らすため、イヤホンを使用します。
出力回路の位置づけ
出力回路の位置づけ
クリスタルイヤホン
クリスタルイヤホン
 
クリスタルイヤホン内部
クリスタルイヤホン内部
左がセラミック、右がロッシェル塩
 

イヤホン earphone

音を得るには電気信号に合わせて、空気を振動させる必要があります。
鉱石ラジオは微弱な信号を扱うため、クリスタルイヤホンで聴くことになります。
クリスタルイヤホンは、微弱な電気信号で振動する圧電素子を利用しています。

なお、オーディオ装置で普段使われているマグネチックイヤホン、オーディオ用ヘッドホン、スピーカーなどは、電磁石の作用で電気信号を音に変換しています。
これらは、十分なパワーを持つ電気信号が必要なため、微弱な電気信号の鉱石ラジオでは鳴りにくいのです。

ちなみに、クリスタルイヤホンのコードは必ずねじられています。
これは、わずかなノイズ信号でも雑音として聞こえてしまう性能があるため、
コードが周囲の電気ノイズ信号をなるべく拾わないようにする工夫なのです。

クリスタルイヤホンで使用する圧電素子として、以前はロッシェル塩 Rochelle salt (Potassium sodium tartrate) が用いられていました。
ロッシェル塩は感度が高いものの、潮解(湿気で結晶構造が崩壊してしまう現象)する欠点があり、 現在は製造が中止されています。
代用品として、圧電セラミック Piezoceramics を用いたセラミックイヤホン piezoelectric earphone が販売されています。
外見がそっくりなこともあり、セラミックイヤホンもクリスタルイヤホンと呼ばれて販売されています。
しかし、中の振動板を覗くと、セラミックイヤホンは平らになっていますが、
ロッシェル塩のクリスタルイヤホンは内部の振動板中央に突起があります。